2021年7月4日。
中央アルプス・空木岳の麓で行われたトレラン大会に参加してきました。
HIGHLAND(20.7k)への挑戦。ここのところランの大会は不調も不調なので、ここもダメなら秋以降はレース参戦はやめよう、そんな気持ちでの遠征になりました。
連戦連敗
先日から今年の私のトレランシーズンが始まりまして、初戦は6/27のHOTAKA SKYRUNでした。
この前のロードの大会「彩の国マラソン 初夏」ではハーフなのにリタイアをしてしまったこともあり、ここで盛り返すぞ!と思いながら参加した大会でしたが……
ふたを開けてみれば約9km地点の第一エイドにて吐き気が収まらずリタイア。
この二戦で分かったこと…… それは、こうして期間が空いても脚力はさほど落ちないが、心肺機能が完全にリセットされてしまっているということでした。
とにかく上り坂が登れなくて…… 会社の階段でも息切れするくらいなのでダメなのは分かっていましたけど、ほんの20m程度の上りですら心拍が跳ね上がってしまうのにはホントに閉口。スピードなんて全然出していないのに簡単に心拍数が180を超えて、とてもじゃないですが連続で行動できる気がしませんでした。何というか、身体が運動することを拒否している感じで……
そんな状態だったので、今回のこの大会も参加するかどうか悩みました。自宅から会場が遠いこともあり、参加すると経費は4万円オーバー。それでもしまたリタイアということになったら、何のために行ったのかと思うだろうなと……
とはいえ、前の二戦は体力を出し尽くして敗れたわけではないので不完全燃焼ですし、ここで行かなかったらその代わりに運動するとも思えず、ただ堕落していくだけになる気がします。なので、今後はこの大会の結果で決めよう、そう思いました。
もしまたダメなら、もう鬱が治るまではエントリー済みの大会も含めてすっぱり諦め、日常生活を維持することに集中。でももし逆にゴールできたら、秋の大会にも参加しようと。
私は走ること自体は全然好きじゃないですけど、大会は好きなのですよね。今年の大会はもう全部DNSにしますというのはさすがに辛いので、ここを試金石にしようと思ったのでした。
万全の態勢で
さて、それでは現地に向かいましょう。今回の舞台は長野・駒ヶ根。ということで土曜日は栃木から350kmの道のりを半日かけて現地入り。
ここをキャンプ地とする
— K-TARO (@ktaro_77) 2021年7月3日
サービス休日出勤のために到着が遅くなりましたが、栃木からはるばる4時間半、長野の駒ヶ根市にやってきました
今回は明日のレース後も泊まるので二泊です。この体制でもダメなら秋のレースは全部キャンセルするつもりで頑張ります pic.twitter.com/SjxwbGiTst
できれば前日受付に行っておきたかったのですが全く間に合いませんでしたので、チェックインしたら即就寝。ちなみに後で詳しく書きますが、前日受付に行ける人はできるだけ行っておくことをお勧めします。
駐車場争奪戦
この夜は睡眠薬が全く効かず、ろくに寝られないまま気づけば空は明るくなってきました。うっ、いきなり不安しかない……
そんな不安を抱えながら5時40分にホテルを出て、車で5分の駒ヶ根高原スキー場に向かいます。(今回は直前でコロナの影響により会場とコースが変わりました)。ところが、すでに38kの部がスタートしていることもあり会場近辺の駐車場はすべて満車。
これにはちょっと焦りました。というのも受け付けはスタート(7時半)の1時間前に締め切られてしまうので、遠くに停めると間に合わなくなってしまうんですね。
結局、いったん会場そばの路側帯に車を停めてなんとか受付し、その後は1kmほど離れた光前寺に停めさせていただいてホッと一息。光前寺の関係者の皆様、ありがとうございました。
雨の中で準備を整え、シャトルバスで送ってもらって会場入り。
大会のスタート前からこんなにガッツリ雨が降っているのは何年ぶりだろう……
空模様からしばらく止みそうにはなく、これがロードだったらやる気なくなるかも、と思いましたが、今日は実は雨が降るのを期待して来場したのでした。その理由はのちほど。
ところで、やはり体調、というか体力はやはり地の底のようです。
この会場は道路から10mほど?高い場所にあるのですが、その道路から会場までの階段ですでに息切れ…… 「なんでみんな平然と階段を上れるんだろう?」と思っていました。コイツ話盛ってんな、と思われるかもしれませんけど盛っていません…… これでどうやって山に登る気なのかと我ながらおかしくなるくらいでした。
なので今日もトレランと言いつつほぼ歩きになるのは確実。でも、今日はとにかくゴールだけはしたいのでした。
序盤は小手調べ
やがてスタート時刻が迫ってきましたので整列。
私の参加するHIGHLAND 20kの部はエントリー数は約300名だったものの、直前でコロナによる「特別警報Ⅰ」が発令され、それに伴うコース変更とキャンセル受付が行われたこと、また今日のこの天候もあってか実際の参加者は210名でした。
7:30、ウェーブスタート形式により大会開始。
さて、その20kのコースマップはこちらです。本来のコースから若干の変更がありましたが、簫ノ笛山(しょうのふえやま)に登って空木岳登山道を下る、というメイン部分は変わっていないはず。
高低差はこちら。よくよく見ると傾斜がおかしいのですがそれはまた後ほど……
出だしはまずロードを行きます。ウェーブスタートはタイム順ではなかったので早い人も遅い人も混在した状態ですが、しばらく広い道幅が確保されているので混乱はありませんでした。
私はもう上りは絶対走らない方針なので早くもここで歩いています。ビリになってもいいのです、時間内にゴールできさえすれば……!
やがてトレイルに入ると、まずは小手調べと言わんばかりのガチ登りがランナーを待ち構えていました。
水平距離500mにして200m上昇という急登。何も考えずに突入したら心拍はあっという間に180を超えて、早くも死にかけであります。大丈夫か……
そんな登りを終えると、1.8kmほど下りの林道が続きます。この辺りになると隊列はだいぶばらけてきて、周囲を気にせず自分のペースで進めるので気楽になりました。
雨の山も、それはそれで風情があるものですよね。こんな機会でもないと雨の日にわざわざ山に入ろうとは思わないので、雰囲気を味わいながら進んでいきました。
登山として見ても異常な登り
林道を快調に下り、こんなに下って大丈夫なんだろうか……と思い始めるころ、簫ノ笛山への登山口が現れます。
例によってコースマップをちゃんと見てない私は、最初のころから登山ルートを進んでいると思いこんでいたので、この看板を見たときはずっこけました。ここから登山道かよ!今までの区間は何だったのか(笑)
ともかく、ここから簫ノ笛山までの登りが今日のハイライトです。標高1,050mのこの登山口から、山頂(1,760m)までの高低差710mをどれだけ早く登れるかで、私が制限時間内(7時間以内)にゴールできるかどうかが決まります。超ざっくり見積もりで、スタートから4時間以内に山頂を通過できればゴールできるはず、そんなプランで臨むことにしました。
でも実際に登ってみたらタイムどころではなかった……
登山道はトラバースなどは一切なく、笑えるくらいずっと尾根通しについています。その尾根も山頂に向かって一直線なので完全に直登なのですが、傾斜が最近の登山では久しく経験してないレベルで急でして…… なんだこりゃ、斜度40度超えてるんじゃないの!?と思うような場面すらしばしばありました。
登山の世界には「日本三大急登」と呼ばれるルートがあり、私はそのうち北アのブナ立尾根と、南アの黒戸尾根の二つに登ったことがあります。これらのルートはその傾斜もさることながら、高低差が大きいこと(=体力の消耗が激しいこと)も考慮に入っているでしょうから今日のこのルートと単純比較はできませんけど、例えば黒戸尾根は登山口から山頂まで8.5kmで2,170m登るので水平1kmあたり255mの登り。それに対して今日のこの登山口から山頂までは1.98kmで710m登るので1kmあたり359mです。はあああ!?辛すぎィ!
加えて今日は雨なので地面は泥グチャで滑りまくり、体力の消耗に拍車がかかります。正直この区間はもう何も考えられずに、ただ黙々と登るだけでしたね。当然走ることなどできません。それは周りの参加者さんも同じで、雨の中をフラフラ登っていく様はとてもレースには見えなかったことでしょう……
ただ、この登りは必ずしも自分にとってマイナスだったかと言えばそうでもなくて。
前二戦は「レース」ということが常に頭にあって、少しでも早く進まなければと焦った結果、心拍数が180を超えて、やがて呼吸が追い付かなくなって休憩……という、まるで登山初心者かのような一番ダメなパターンに陥りがちでした。
この日も最初の頃は同じパターンにハマっていたのですが、これでは上まで持たないと感じたので、有酸素運動と無酸素運動の境界である心拍数110あたりをキープして、とにかくゆっくり、かつ休まないように進むという、本来の登山のペースに戻しました。
ここのところこの基本がずっとできていなかったので、久しぶりに自分の登山を取り戻せた気分。そうしてみたらそこまで苦しくはなくなって、中央アルプスの山はやっぱり栃木の山とは植生が全然違って面白いな、とか、辺りを見回す余裕もでてきました。最後尾の方なので追い抜かれることはなく、むしろ追い抜いていくのでテンションも上がってきたのでした。
それと、今日は雨なのが本当に自分にとって救いでしたね。適度に身体を冷やしてくれるので汗だくになることもなく、吸水も少なめですんで助かりました。これがもし炎天下だったなら、私はゴールできなかったかもしれません。
泥にまみれるのも一興
そうしていたら、いつの間にか簫ノ笛山は通り過ぎていました。
実は今日の最高点は簫ノ笛山ではないのでまだ登りは続くものの、登り一辺倒ではなくなったので気は楽になりました。上の写真は平坦地なんですけど、登りから解放されるとこういう道は天国に思えますね。
そうして、本日の最高地点となる1,969ピークに到着したのがちょうど11時。
スタートから3時間半なのでちょうど半分を消化したことになりますね。半分でここまで来られたのは自分にとっては上出来です。あとは下るだけですからね!
ということで、ここからはスピードを上げていきましょう。ここまで上ってくるとさすがに寒くて、雨も強くなってきましたからのんびりしていると冷えてしまいそうです。ふと冷静になって周りを見たのですが、こんな雨の中を半袖Tシャツ1枚で登ってるとか、登山として考えたら狂気の沙汰ですからね。遭難待ったなしです(笑)
では走っていきますよー!
雨のおかげで地面はドロドロ。でもこの辺りはまだ滑るというほどではなかったので気楽でした。思わず動画も撮ってみたり。
片手でiPhoneを持ちながらなのでスピード感ゼロの動画ですが、雰囲気だけでも……
25分ほど下ると、第一エイドの池山避難小屋にたどり着きます。ここでは給水ができるので、暑い日はありがたい存在になることでしょうね。
避難小屋の少し先に池山があり、そこからは5.5kmほど一方的な下りになります。
傾斜も適度でトレランにはまさにおあつらえ向き。ということで飛ばして……と行きたいところなのですが、ここから地面が粘土質になってきました。
なのでスピードが乗ると滑ること滑ること! そこら中にランナーが転んだと思しき跡があり、実際に転倒するのを目撃することも数知れず。
なので怖くてあまりスピードは出せませんでしたが、どうせ雨で全身ずぶ濡れなので、いっそ転んでもいいと割り切った方が楽しかったかもしれませんね。こんな天気の山を走るなんてソロだったら絶対やらないし、逆に言えばあえてそんな大会に出ているのですから、羽目を外しても良かったかも。
ゴールを称えあえるのがトレラン
とはいえやはり下りは早いもので、ぐんぐん下がっていく高度計の数字を楽しみに走っていくと、15.7km・池山林道終点の第二エイドが見えてきました。(12:08)
ここでは飲み物の他に食べ物も出ていたと思います。私は前回水不足になった反省で2Lほどザックに入れてきたら、今日は500mLも飲まないうちにもうここまで来てしまったのでエイドには寄らず。
ここから路面は砂利道に変わります。やっと泥沼から解放されたぞ!
ということで気分良く下っていきます。ジョグペースなのでバンバン追い抜かされはしますが、 もうゴールまで5kmを切っているので気分は上々。追い抜いていくランナーさんからも「もう少しだから頑張りましょう!」なんて言ってもらったりして、よし、このままゴールまで一直線だ!楽勝だ!なんて思っていました。
しかし途中でスタッフにトレイルに誘導され、地面はふたたび泥沼に(笑)
しかも下の方は地面が柔らかいためかこれまでよりはるかに路面がひどくて、もはや水田を走っているのと変わりません。これには周りのランナーも皆苦笑。来年もまた雨だったら、スタッフにコース変更を進言したくなるほどでした。
でも、そうは言っても残りはほんの数キロ。
会場が見えてからいったん遠回りするコースなので心が折れますが、基本は下りなので体力はさほど減らさずに進むことができました。ゴール付近では自分としては珍しくラストスパートする余裕もあり、
13:12、制限時間の1時間48分前に無事ゴール!
種目別順位は後で確認する形式で、リザルトでは76/82位でした。
ということで相変わらずビリの方ですが、今日はとにかくゴールできたのが嬉しいですね。最後も思っていたよりヘロヘロになっておらず、今回のように前泊・後泊するなどして体力の温存を計れば、この体調でも何とかレースができると思えたのは大きかったです。前二戦でもうメンタルは地の底でしたけど、少しだけ希望が見えてきました。
余談ですが、ゴール後、会場ですれ違ったり、駐車場で顔を合わせたランナーさんと自然に「お疲れさまでした!」って言い合えるのは、トレランの良さかな~なんて思えたりしますね。今日はコンディションがひどかったことも連帯感を高めるのに一役買ってるんでしょうけど、お互い頑張ったねって素直に思えるのは、ロードよりもトレランの方が顕著なように感じています。
この後はこまくさの湯に寄ってさっぱりし、まだ陽も高かったので汚れたウェア一式はコインランドリーで洗って乾燥までできました。これが日帰りだと夜に家に着いて、今から洗濯かよ……ってうんざりするところなんですよね。さすがにレースのたびに有給ってわけにはいきませんけど、こういう余裕があるってやっぱり楽だよなぁ、と思ったのでした。
大会を振り返って
まず、こんなご時世にも関わらず、関係各所と調整を重ねて大会を開催にこぎつけてくださったスタッフの皆様、ありがとうございました。おかげさまで楽しい一日が過ごせました。
今回参加したHIGHLAND20kは、前半の超急登が過酷でメンタルをだいぶ削られますけど、その登りが終われば後は気分良く走っていける、トレランとして楽しめるコースだと思いました。(地面が泥沼じゃなければもっと良かったんですが(笑)) 普段山に登り慣れていない人だと山頂まで数時間はかかると思いますので、特に暑い日は水分は多めに持っていくのをお勧めします。
さて、これで初夏の大会は終了です。
8月は登山やライブに参加するので、次の大会は9/4の軽井沢トレイルランニングレースになります。鬱はそう簡単に改善するとも思えず、これを書いている今(レースから10日後)ですらまだレースの疲労が抜けきらないくらいなので本調子では望めないでしょうけど、少しでも楽しめるようにできたらいいなと思っています。