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登山とマラソン、ときどきゲーム

白山

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2021年8月4日。

世間より一足早い夏休み。せっかくなら連休でしか行けないところへ……と思い、はるばる岐阜/石川にまたがる日本三霊山の一つである白山まで遠征してきました。

現地までの往復の苦労は想像以上でしたが、そんな代償を払うにふさわしい、今年最高の山行が楽しめたのでした。

 

 

二日間の徹夜の果てに

私の夏休みは8月第一週でした。せっかくの平日休みだし少しは山に……と候補をいろいろ考えていまして、どこか一つを選ぶなら、一番行きたいのは白山でした。

この白山、乗鞍・御嶽はもちろん北アルプスからも何度も遠望しており、いつかあの頂へ……と思いながらも、距離の遠さに二の足を踏んでいた山になります。週末の連休で訪問するのはとても厳しいので、行くなら今しかないと思いました。

 

ただ誤算だったのが、月曜日の夜は睡眠薬が効かずに一睡もできませんで……

登るのは水曜日ですが、朝から登るとなると火曜の夜に自宅発=火曜は寝られない、ということなので、せめて月曜日はたっぷり寝ておこうと思っていたのにまさかの徹夜。

本当は水曜日に白山を下山した後に立山の雷鳥沢でテント泊して、木曜朝に雄山でご来光を……ともくろんでいたんですけど、二日間寝られないことになって、それどころではなくなってしまいました。白山だけにこの残り少ない体力をすべてぶつけるしかないですね。

 

ということで、火曜日の21:30に自宅を出発。

岐阜県側の登山道である平瀬道の登山口を目指して、東北道→北関→関越→北陸→東海北陸と高速を乗り継ぐ580km、7時間40分の旅が始まりました。

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 あえて書くまでもないと思いますが、まあ遠かったです……

白川郷で高速を降り、最後の白山公園線(県道451号)に差し掛かった頃には辺りはすっかり明るくなっていました。

この白山公園線はやっかいでしたね。登山口まで12kmほど林道を行くのですが、地面は舗装されていて走りやすくはあるものの、大半の区間で道幅が一車線分しかなくて。この時間なので対抗車が来ないから行きは良かったですけど、帰りが思いやられます。

白水湖そばの駐車場に着いたのは5:20。

駐車場は上下二段になっていまして、今いるのは下の駐車場(50台)です。上の駐車場は非舗装だったのでこちらに停めましたが、真夏は上に停めた方がいいと思います。理由は最後に。 

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駐車場にはトイレありで、電波もauは入りました。自販機などはないので飲み物は道の駅で買ってくるのがいいでしょうね。

 

よく整備された登山道

5:44、登山開始。 

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まずは最初のランドマークである大倉山避難小屋(CT:2時間半)を目指して歩いていきます。ここの標高が1,250m、避難小屋は約2,030mなので780mの登りですね。

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今日は御前峰(2,702m)まで1,452mも登らなければならないうえ、二日間も寝ていないので自信は全くありません。そこで、どうせ今日は下山したら近場のホテルに行くだけですし、CTは気にせずにとにかく心拍数を120以上に上げないように、疲れないように登ることを意識しました。とはいえ

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実際はこんな感じでしたが……

 

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さて、その避難小屋への道は全般的に緩やかな上りになっています。急なところは階段が整備されていますし、一歩一歩の段差が小さいので足上げの負担も軽く、かなり登りやすい登山道と言ってよいと感じました。さすがは百名山ですね。

1kmごとにこのように道標があるので、それを励みに登っていきます。

 

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登るにつれ、後方(東方向)も 

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前方(西方向)も視界が開けてきます。

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木々の間に山頂が見えるようになり、やがて 

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大倉山避難小屋に到着しました。(7:58)

 

高山植物は今が旬!

次のランドマークは白山室堂ビジターセンター、CTは1時間40分、標高差約420m。

避難小屋までの道のりと比べれば簡単ですが、歩みはかえって遅くなりました。というのも……

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ここから、いよいよ「花の百名山」たる白山の本領が垣間見えてきます。

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登山道の周りはどこも花でびっしり。こんなに花が咲いている山があるのか!?と思うくらいで、衝撃的ですらありました。

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さらに植生は標高で変わっていくので、この標高だとこの花が咲くのか……なんて観察ながら写真を撮ったりしていると足が進みません。

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避難小屋までの安全な道と比べると、室堂まではこのように若干注意が必要な個所もあったりして気は抜けませんが、

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とにかくお花の量が圧巻で疲労は感じませんでした。

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後半、連続する階段を上りきれば……

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あとは室堂まで平坦な道を行くだけ。

この室堂までの道は本当に非日常感がすごかった!今日は平日だしこの時間に平瀬道から上がってくる人はほぼいないので、室堂までは誰とも会わず。花が咲き乱れ、雪渓からの清廉な雪解け水が流れる中をのんびり歩いていると、こんな至高の空間があっていいのかと思うほど。

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とにかく周りは見渡す限り花、花、花でした。

ここなんて黄色のミヤマキンバイが一面に広がる中、紫色のハクサンフウロがまるで川の流れのように奥までずっと咲いていて、誰かが植えたのか?と思うくらい。自然でこんなに花が群生するなんて信じられない光景でした。あー、これ絶対写真じゃ伝わらないよなー!って、撮りながらもどかしくなるほど、本当に素敵な眺めでしたね。

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そんな行程でしたのでCTより少し遅れてしまいましたが、10:04、スタートから4時間20分で、室堂ビジターセンターにたどり着きました。

 

近くて遠い山頂

室堂に近づくにつれ雲が多くなってきて、山頂の辺りはかなりガスっていました。この後の作戦も考えたいのでここでいったん休憩。

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ビジターセンターの売店でペプシをゲットして一息つきます。ここで飲み物が買えるのはありがたい!

 

さて、どうしようかな……

雲に囲まれてしまっているため遠望は望むべくもないですが、せめて山頂(御前峰)に登った時は山頂だけでも晴れていてほしいものです。池巡りもしたいので、どちらを先にするか悩みましたが、今のうちならまだ山頂は晴れている時間も多そう。ということで、先に御前峰に登って、そこから池に降りて室堂に戻ることにしましょう。

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では行きますよ!

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ここから山頂まではCT40分、高低差250m。室堂から見ると近くに感じるので、40分もかからんだろう……なんて思いながら歩きだしました。

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でもまあ、足が進まないですよ。

道端には花が満開。イワギキョウなんて植えたんじゃないの?と思うくらいずっと道沿いに咲いてて…… どうやったら綺麗に撮ってあげられるか、アングルを工夫していたりしたら時間はどんどん過ぎていきました。

 

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山頂までの登山道は土と岩。段差はご覧の通り小さくて登りやすく、本当によく整備された山でした。そんな道を休み休み登っていくこと50分……

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11:23、とうとう本日の最高地点である御前峰に到着です。

登山口から登ること1,452m、5時間39分。さすがに疲れましたが、やはり山頂まで来ると達成感がありますね!(^-^)

 

一瞬の晴れを求めて

そうしてたどり着いた山頂はあいにくとガスの中でした。

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室堂も見えたり見えなかったり。しかし、せっかく登ってきた山頂をすぐに去るのはもったいないですし、だいぶ疲労が出てきたので少し休んでいくことにしました。

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そうしていると、ガスが途切れて下にある池が見えるようになり……

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山頂からも少しだけ青空が。どうでしょう、この写真だけ見るといかにも夏の山頂!って感じしません?(笑)

これ以上は晴れないでしょうし、少しでも青い空が撮れて満足。何も見えないかもしれませんけど、下の池まで下りてみることにしましょう。

 

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ここから池までは、少し荒涼とした雰囲気の中を進みます。

地面もザレた岩場になり、道標も少なめなのでガスっている時は道迷いに注意。浮石も多いので落とさないように気をつけて歩いて行きました。この山頂から下の池までの区間は、今日の行程の中で唯一、そこまで整備されている感がない道でしたね。

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でも、そうして降り立った先はまさに花々の楽園。

まず出迎えてくれたのは一面のチングルマです。ここ数年は花が散って綿毛状になったチングルマしか見たことがなかったので、久しぶりに花が見られて嬉しかった!

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翠ヶ池も綺麗でしたが、関心はやはり花の方に向いてしまいます。

頭上はガスに覆われていますが、切れ間から少しだけ太陽がのぞく瞬間があって…… やっぱり花は晴れている時に撮りたい。もちろん曇りの中でどれだけ花の魅力を引き出すかも撮影テクニックだと思いますけど、私は単純に写真から夏を感じたい。例えば

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これよりも

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こっちの方が断然好きなんです。

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なので、シャッターチャンスが訪れるまでずっと晴れ待ちをしていました。

 

写真で撮っても絶対に伝えられないと思ったので写真がないですが、この池巡りルートは見渡す一面全て花畑で、もう言葉が出ないくらい圧巻の光景でした。

そんな花々が、太陽に照らされると鮮やかに輝き、その光景はまるで自分たちは生きているんだと大合唱しているかのようで……

動物と違って草花は動きもせず意思表示もなく、普段は生き物だということをアピールするものではありません。でもここにあったのは圧倒的なまでの生命の息吹で、そのあまりの力には感動を通り越して畏敬の念を覚えるほど。こんな感覚に襲われたのは2014年に北アの薬師沢を訪れたとき以来です。

これなんですよ、私がこの時期の山が一番好きな理由は。

ここにいると、山は生きているんだということを否が応にも実感させてくれて、この空間にいられることがとても幸せなことに感じますし、自分も生きていこうと思うような、そんなパワーをもらえます。これが秋とか冬になると、もう山から生命感を感じなくなってしまうんですよね。なのでこんな貴重な時間を得られたことを感謝しながら、ゆっくりゆっくり歩いて行ったのでした。

 

容赦ない日差し

そうして室堂に戻るころには、辺りは完全にガスに包まれてしまいました。

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登ってきてこの光景だったらがっかりするでしょうね。少しでも晴れている時に登れてよかった。では、今日はこれで撤退しましょう。

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コバイケイソウがピークを迎えた室堂を後にします。山荘の周囲も花だらけで、本当に素晴らしい場所でした。

 

さて、後はひたすら降りていくだけですが、1200mの下りはさすがに一筋縄ではいかず。

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難しいわけではないんですけど、とにかく長いんですよね…… 急坂ではないので歩きやすい反面、高度が思ったほど落ちず。

しかも最初の頃はガスっていたからいいのですが、中盤以降は晴れ渡ってしまって太陽が背中に容赦なく日差しを浴びせてきます。あっちぃぃ!このおかげで首筋は(日焼け止めはもちろん念入りに塗っていたのに)軽いやけどになってしまいました。

唯一の救いだったのは風が涼しかったことでしょうか。朝の駐車場が20℃だったので、帰りは暑そうだな……と思いきや、白水湖から吹きあがってくる風は意外なほど涼しく。この風のおかげでだいぶ救われました。この区間だけはCTを巻いて、2時間50分のところを1時間50分で駆け下り……

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15:10、駐車場に戻ってきました。お疲れさまでした!

 

ちなみに真夏の日差しに照らされ続けた車はとても乗り込めたものではなく、耐えられる温度になるまではしばらく時間が必要でした。上の駐車場は木立の中なので適度に日陰になっていましたから、空いていたら上に停めるのをお勧めします。

 

この後は黒部まで戻ってホテルに入り、翌日、半日かけて栃木に戻ったのでした。

 


 

こうして2021年夏休みの登山は幕を閉じました。結局登ったのはこの白山の一座のみでしたけど、自分が山に求めている要素はここにすべて集約されているといっても過言ではないくらいの山行になったので、この一座のみで本当に満足です。

 

白山、本当に素晴らしい山でした。こんなに花が咲いている山に登ったのは初めてで、これまでに見たことがない景色を存分に楽しむことができました。

今回登った平瀬道は、石川県側の別当出合からのルートと並んで、御前峰にもっとも早く登れるルートになります。道中は一部片側が切れ落ちている部分があるものの、危険個所というほど危ないところはなく、道もよく整備されているので、標高差の割にはかなり登りやすいルートだと感じました。

登りが約5時間ということで誰にでも勧められる山ではないですが、ある程度登山を重ねて体力に自信が付いたら、いつかぜひ登って欲しい山だと思います。その苦労を補って余りあるだけの楽しさを、きっと味わえると思いますよ。

 

※最後に、Reliveで今回のコースを紹介しておきます。GPSウォッチをGarminに替えたことで、Reliveの記録を作るのが楽になったのは嬉しいですね。