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登山とマラソン、ときどきゲーム

秋田駒ヶ岳

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2021年4月3日。

今年は一度も雪山に行っておらず、せめてどこかに、それもこれまで行っていない山に登りたい…… そんな気持ちで、はるばる秋田まで遠征してきました。

天気は微妙だけど晴れてほしい、山頂から推しに言いたいことがあるんだ……!

 

先日、トレランの記事に書きましたが、2021年は年始から全く運動をしておらず、したがって山にも行っていませんでした。厳密には正月に那須の茶臼岳に登りましたが、あれは運動というほどのものでもなく……

そうこうしているうちに季節は春になり、今年は積雪が少なかったこともあって関東の山々からは早々に雪が消えてしまいました。私は別に雪山が大好き!ってわけではないので、雪山に行けなかったら行けなかったで別に構わない……のですが、そうは言ってもやはり一座も登らないのはちょっともったいない気がします。

しかし、前述の通り栃木近辺の山はもはや雪山とは呼べない状態に。そこで、どうせなら今まで一度も行ったことがないエリアまで遠征してみようと思いました。

目指すは秋田の名峰・秋田駒ヶ岳。冬に日本海側の山に登るのは初めてなので、どんな雰囲気なのか楽しみです。

※面白い登山記ではないのになぜか長くなってしまいました。お暇な方だけどうぞ。

 

まさかの曇り、しかし

先週のトレランから体力が回復しておらず、というより一週間の仕事の疲労が重なってむしろ余計に疲れているので、できれば土曜日はゆっくりして日曜日に挑みたいところ。

しかしここのところ週末は土曜日しか晴れず、延期していると雪が解けてしまうので、決行は土曜日にせざるを得ませんでした。しかも今回は登山口まで440km・6時間のドライブから始まるので、金曜日は一睡もしないまま徹夜ドライブに出発です。やめてください、登山口にたどり着く前に死んでしまいます。

 

ーーーーー 

 

そうして深夜の東北道を北上すること5時間、栃木から福島、宮城を抜けてようやく岩手に入ったところで空が明るくなってきました。しかし頭上はどうも晴れてはいない様子。

でもまあ高曇りだったらいいか…… と思いながらさらに北上すると岩手山が見えてきたのですが、なんと、7合目から上はバッチリ雲の中じゃないですか!しかも、その雲は西方面・すなわち秋田駒ヶ岳の方までずっと続いています。

これには本当にガックリ来ましたよ……

その後、しばらく西方面に向けて走っても雲は一向に途切れる気配はなし。私は曇りや雨なら登山しない主義ですし、「せっかくここまで来たんだから」という気持ちは登山において事故の遠因だと思っているので、よっぽどここでUターンして帰ろうかと思いました。コロナ禍なので観光もはばかられますしね。

 

しかし……

とりあえず登山口までは行こうと車を走らせること数十分。この頃になるともう空を見る気も起きなくて、ただナビと道路だけを見て車を走らせていたのですが、ふと車窓から右手を見ると、そこには秋田駒ヶ岳がはっきりと見えているではありませんか! 

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冬期の登山口となるアルパこまくさに着いた時には、空には晴れ間も見えていました。晴れを期待して来てこの空ならがっかりするかもしれませんけど、さっきまでの諦めムードからすればもう大勝利の気分!これはラッキーでした。

 

地味に大変なゲレンデ登り

さて、では今日のコースのご紹介です。 

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花の名山として名高いこの秋田駒ヶ岳、夏季は八合目までバスで行けるのでお気楽登山なのですが、冬期はここ、アルパこまくさから歩いて登らなければなりません。 登山口から山頂までの単純標高差970m、距離は往復で12kmの雪山なのでそんなに簡単ではないですね。しかしこの時の私は徹夜明けだったので、往復6時間もあれば十分だろう……なんて適当な見積もりをしておりました。

 

準備を整えて、6:55、登山開始。

※余談ですが、アルパこまくさは9時からの営業なのでそれまでは中に入れません。このように早く出発するのであれば、トイレはここに来るまでに済ませておきましょう。

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アルパこまくさから少し上るとゲレンデに出ます。ここは田沢湖高原アッスルスキー場の跡地で、山と高原地図だとゴンドラのラインが引かれているところですね。

まずはこのゲレンデ跡をトップまで上がっていきます。雪は締まっていて埋まりはしませんでしたが、ちょっと滑るので最初からワカンを装着。

今日の行程は最後の男女岳(おなめだけ)以外は緩斜面なのと、ほとんどの区間が開けていることもあって、ワカンよりもスノーシュー派の方が多い印象でした。また、山スキーが目的で入山している人がとても多くて、スキーで登っている人もしばしば。私ももしまた来るとしたらスノーシューで来ようかな、と思います。

 

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……しかしこのゲレンデ、長いですね……

距離にして2km、標高差300mの単調なゲレンデ登りが地味に精神を削ってきます。しかも今見えている山頂に直接登るのではなく、いったん裏側に回り込まないといけないので余計に長く感じました。もうすでに疲れてきたよ。

 

早くも体力切れ

そうして歩くこと一時間弱、ようやくゲレンデ登りが終わりました。

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ここからは樹林帯を抜けて八合目小屋を目指します。

すぐに県道127号線に出るのでそれを辿っていくのですが、とはいえ道路は雪の下なので、適当に見当をつけて進んでいきます。この写真にもありますが、ピンクテープがあったり

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カーブミラーがあったりしますので、道をたどること自体は容易。

もちろん車道を忠実にたどると距離が長くなってしまいますから、適度にショートカットしながら進んでいきます。なお、このように残雪期ともなると踏み跡はもう無数にあり、なぜか丘越えしてたり沢に突っ込んで行ったりするトレースも多々あるので、安易に踏み跡には頼らない方がいいでしょう。

 

そしてこの行程で早くも体力はゼロになりました。

先ほどまでは徹夜明けのハイテンションだったので何となく歩けてましたが、出発の時点で体力はほぼゼロだったんですから仕方ないですね。なのでこの樹林帯はもう無限に長く感じて、俺はなぜこんな苦行をしているんだ……とただただ辛かったです。見通しもないですし。

 

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ですから、樹林が途切れてこうして八合目小屋が見えたときは嬉しかったですね。とにかくあそこまでは行こう!という気になります。

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こうして死にかけながらも、9:21、スタートから2時間25分でまずは八合目までたどり着きました。おええ、疲れたよ……

 

見えてからが遠い

八合目の標高は1,310mですから山頂との単純標高差は327m。距離も残り1.5kmで、上り行程は残り三分の一を切りました。

しかし体力は残り三分の一どころかゼロなので、無理は禁物。私は雪山では休憩しない主義なんですけど、今回はいったんここで休むことにします。

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食事しながら少し休んだら体力も戻ってきました。

4月とはいえ雪山なので悪材料が多いなら撤退も考慮すべきですけど、

・山頂まで行ったら力尽きて倒れるというほど体力がないわけではない

・天気予報も晴れで気温も高く、こちら側は風裏なのでそよ風も吹いていない

と、特に問題になるような要素はありません。続行しましょう。

 

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八合目から見た山頂。

徹夜明けで脳がアレなので、二次元の地図をこの三次元の風景にオーバーラップすることがなかなかできなくて苦労しましたが、正面に見えているのが秋田駒ヶ岳・最高峰の男女岳(1,637m)で、そこに至るルートは右回り、左回り、そして正面の谷筋の三つ。

谷はさすがに敬遠するとして、右回りは何名かのレポを見たところ急登のようですし、稜線の雪が一部破断していたりして微妙に不安なので、無難に左回りで行きましょう。

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アバウトに夏道を辿って。もうだいぶクマザサが出てしまっているので尾根通しでは行けず、トラバース気味に歩いていきます。

しかしまあ、一歩一歩が重いですね。残り1.5kmなんて楽勝なはずなのに山頂がなかなか近づきません。

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途中で夏道と分かれ、積雪期にしか入れない浄土平にダイレクトに下降。

ここでようやく男女岳が大きく見えます。八合目からここまででずいぶん疲れましたが、あとはあれに登れば終わりだ!

 

最後はアイゼンで

それでは、最後の登りにとりかかりましょう。

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もっとも傾斜が緩そうな夏道沿いからトライ。傾斜は25度から28度くらいでした。

雪がグズグズなのでスノーシューのままでも行けそうな気はしましたが、下りがちょっと嫌だなと思ったので素直にアイゼンに履き替え。ちなみに、自分自身はアイゼンに替えたのに、私の後ろから来た人に「スノーシューで行けますかね?」と聞かれて「この雪なら行けるんじゃないですか!」と無責任に答えてたりしました。ひどいな(笑)

 

今日の行程で一番きつい登り。とはいえその高低差は100mほどですから勢いで登り切れる距離です。息切れを感じつつもテンションだけで歩を進めて……

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10:56、スタートから4時間で、ようやく秋田駒ヶ岳・山頂に到着しました。はぁ~、疲れたぁ……!

 

山頂から推しに言いたいこと

ちょうど曇ってしまったので山頂からの眺めはいまいち。

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でも視界があるだけありがたいと思うことにしました。それに標高が高い山ではないので、もともと遠くまでは見通せないのかもしれません。

 

さて……

今日雪山に来たのには、山とは関係ないところでちょっと事情がありました。

推しが出演している「CUE!」というコンテンツがあります。これはゲームアプリと共に声優さんたちのライブなどメディアミックスで展開している作品なのですが、このうちのゲームアプリが昨今の情勢もあり4月末でサービス休止になることが決まりました。

メディアミックスなのでアプリが休止でもコンテンツ自体は継続ですが、アプリのキャラクターたちにしばらく会えなくなるのはユーザとしても痛手ですし、推しの活躍の場が減ってしまうのも残念です。

そんなCUE!は、もとはと言えば推しがきっかけで見始めたコンテンツではあるのですが、結成からこの一年半のキャストさんの成長・活躍を見ているうちにコンテンツ自体がいまや私にとってとても大切なものになっていまして、アプリのサービス休止にあたり何か意思表示をしたいなと思っていました。そう思ったときに、彼女が担当している丸山利恵というキャラクター ーーー 私の登山記でもたまに写真載せていますが、どうせならその利恵と山に行ってそこでコメントしようと考えたのです。

彼女のファンの中でも利恵を雪山に連れていけるのは私くらいでしょうから、インパクトはあるだろうなと(意味はないけど)。ということで…

 

このツイートの文章は家を出る前からずっと考えていたのに、脳がダメなので山頂に着いたらすっぱり忘れてしまって、なんかいまいちな文章になりましたが仕方ない……

景色いまいちで雪山の過酷感も伝わらないですが、これで一応目的は達成しました。

 

日焼け、日焼けが!

そんな山頂は風が吹きつけてここだけ寒く、空が晴れ渡るのを待つ余裕もないので長居はせずに下山することにします。

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すぐ隣には本峰の男岳(1,623m)が大きく見えました。夏ならここから40分くらいで向こうまで行けるようですけど、今日はやめておきましょう。またいつか来たときに。

 

帰路は素直に往路を辿ることにします。まずは浄土平へ。

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ここの上り下り、今はもう雪が腐ってるので不安感はないんですが、厳冬期だったらちょっと慎重さを求められそうな傾斜でした。アイゼン・ピッケル・メットがないと危ないですね。もっとも足を滑らせても浄土平まで滑り落ちてそこで止まりそうではあるので、視覚的にはそんなに怖くないとは思いました。

 

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浄土平まで下りてきて振り返ると、男女岳の斜面には無数のシュプールがついていました。写真には写っていませんがこの時間になると登山者は複数いて、多くの方がスキーで下山されています。登山口までずっと滑っていけるから楽でしょうね、いいなあ!

 

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下るにつれて徐々に天気は回復してきました。登山あるあるですね。

スキーの方々は直接八合目の方に降りたようなのでこちらは静か。風もない穏やかな空の下を歩いて行くのは楽しかったです。

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しかし、そんな楽しい気分もゲレンデに出るまで。

帰路もゲレンデはとても長く、そして空は完全に晴れてしまったので反射光がすさまじいです。日焼け止めなんて何の役にも立たないレベルで肌が痛い!痛い!早く着いてくれ!

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……ということで最後はメンタルがやられましたが、なんとかアルパこまくさに帰還。は~、ようやく終わった、今日の登山は辛かった……!

時刻はもう14時過ぎ。予想より一時間オーバーでもうクタクタでした。アルパこまくさにある温泉はほぼ貸し切りでしたので、のんびりして体力が戻るのを待ってから、この地を後にしたのでした。

 


 

こうしてどうにか今年も雪山に行くことができました。一座だけですが雪山に登るという目的は達成されたので満足です。推しにツイートもできましたしね。

この秋田駒ヶ岳、今日のルートだと危険個所や難しいところはありませんので、降雪直後や急に気温が高くなった日など、いわゆる雪崩の起きる可能性の高い日を除けば、雪山としては比較的安全な山だと思いました。

もちろん、そうは言っても雪山ですし、行程はちょっと長くて途中で天気急変の可能性もありますから、装備はちゃんとしておきましょう。スマホの予備バッテリーや充電器も忘れずに。

 

次に来るとしたら初夏に訪問してみたいですね。今回はとんぼ返りしてしまいますけど、この秋田駒ヶ岳や隣の八幡平は高山植物の宝庫なので、何日か腰を据えてのんびり回れたら最高だな、と思っています。