2020年10月18日。
志賀高原の山と湖を巡るトレラン大会に参加してきました。
ミドルの部への参戦ですが、それでもトレランとしては自己最長となる32km。
果たして制限時間内にゴールにたどり着くことはできたのでしょうか……?
極寒の志賀高原
この大会、運営されるのは長野のトレランではいつもお世話になっている「北信濃トレイルフリークス(KTF)」さん。KTFさんの大会は土曜日開催が多いのですが、今回のこの大会は日曜日開催でした。ということで土曜日は中野のホテルに宿泊して、当日は朝5時に現地へ出発。
この時期の大会は年によって寒暖差が激しくなりがちですけど、今年は「寒」の方。前日の土曜日は志賀高原は初雪が降るほどの冷え込み。アナウンスによれば中野からの道路はノーマルタイヤで会場まで行けるとのことでしたが、会場近くの道路は凍結していて、私の車(86)はFRなこともあって大苦戦。スリップして真横を向いたときはガードレールへの衝突も覚悟しました……
気温0度の志賀高原からおはようございます☀
— K-TARO (@ktaro_77) 2020年10月17日
今日はここでトレランです。ミドルの部ですが、それでも33km。トレランでは自己最長距離です、大丈夫かな💦
俺、この戦いが終わったら、ひーちゃんにお手紙書くんだ… pic.twitter.com/WpG7jKHPvt
ということで、苦労しつつ会場となる熊の湯温泉に着いたのは6時過ぎ。極寒です!
志賀パレスホテルで検温し、体調チェックシート(一週間分の検温記録)を提出して受付したら、スタートまでは車で待機。
この大会、今日はロング、ミドル、ショートの三部門ありまして、ロングはすでに5時にスタートしています。私が参加するミドルは8時からウェーブスタート開始。時間に余裕があるので、仮眠したりして過ごしました。
ゲレンデを登ると雪国
そうしているうちに時刻は8時を過ぎました。そろそろ会場に向かいましょうか。
パレスホテルから歩くこと3分で、会場となる横手山スキー場に到着。目の前でDブロックがスタートしていくところでした。
受付の下りでも書きましたが、この情勢下での大会開催とあって、KTFさんは当然ながら感染防止には充分対策を練っています。その対策の一つがこの密を避けるためのウェーブスタート。申告タイム順にA~Kの11ブロックに分かれていて、私は最終組のKブロックでのスタートになります。3分おきのスタートのため、スタート時刻は30分遅れの8:30。(制限時間も30分後ろにずれます) なのでのんびりしていても余裕なわけです。
次々に出発していくランナーたち。先発組を全て見送ったら、いよいよ私たちKブロックの出番です。8:30、手拍子の中、32kmの山旅がスタートしました。
さて、それではコースのご紹介です。
今日出場するミドルの部は、横手山スキー場を起点として志賀高原の山々を反時計回りにぐるっと一周するコースになっています。制限時間は9時間(だと思っていました)。
高低差はこんな感じ。
17km地点の第一エイドまでが山岳セクションで、エイドまでの距離が長いこともあって厳しい印象。ここをどう乗り切るかがポイントになりそうです。
では、まず横手山まで550mほど登ります。
上位グループはこうしたゲレンデも走って登っていきますが、我々はさすがに歩きです。まだ先は長いですからね。私なんてそもそも32km踏破できるのかもわからないですし……
見てくださいよこの斜度。走れるわけない(笑)
横手山ドライブインでいったん車道に出たら、本格的な山登りの始まりです。
この辺りから周囲には雪が出てきました。日陰側は木々も地面もすっかり雪化粧。気温も低くて、半袖短パンのランナーとのミスマッチ感が凄いです。この辺はシングルトラックなので追い抜きはできず、後方集団は団子になって山頂を目指しました。
9:31、スタートから1時間で、本日最初のピークかつ最高峰となる横手山(2,307m)に到着。なんだこれは、雪山登山かな?(笑)
長い長い泥沼との闘い
登り切ったら、しばらくは下りに転じます。
正面に雲海を見据えて、ゲレンデを駆け下りていきます。爽快だね!
……そう、ここまでは楽しかったのだ……
この雪は標高が高いから雪なのであって、下るにしたがって溶けていきます。気温も徐々に上がってきたので、溶けるペースは加速して、どうなったのかというと……
そう、泥沼ですよ。
このドロドロトレイルはほんと酷かった……!
部分的にぬかるんでいるぐらいならともかく、ルート上ずっと泥沼。私はもう登山歴13年くらいになるんですが、こんなに長い泥沼の山道を歩いたのは初めての経験でした。
周りの皆さんはどうにかよけようとしていましたが、道幅全部が泥沼なのでよけようがないし、うかつに足を着くと滑るので転倒者が続出。私は下手によけて転ぶぐらいだったら……と早々に諦めてしまって
この有様(笑)
もうね、トレイル”ラン”どころではないです。ただでさえこの寺子屋峰までの道のりはアップダウンが激しい山道なのに、足元は滑るし埋まったら抜けないしで走れたもんじゃありません。
しょっぱなから雪山で、下ったら今度は走るのもままならない泥沼。まさにエクストリームだね!
というわけで、このセクションは本当に長く感じました。
地面がこんな状態でなければ、ところどころ展望も開けていて気持ちのいいトレイルだと思うのですが
行けども行けども地面はグチャグチャ。
走れていないので時間がかかるわりには進めず、体力も徐々に消耗してきて、さすがに焦りが出てきました。
山道の途中だと何となく休憩を取る気にもならず、エイドに着いたら何か食べないとガス欠になるな……と思いながら歩いていたのですが、そのエイドが遠いこと遠いこと。そうしているうちに時刻は11時を過ぎ、12時を過ぎ……
なので、寺子屋峰を下りきってゲレンデに出た時は本当に解放感で一杯でした。
やった!ドロドロトレイルが終わった!
あとはもうゲレンデを駆け下りていくだけです。やっと走れる区間が出てきたんですからここで走らないわけにはいきません。ここまでのうっぷんを晴らすべく、全開で駆け下りて……
13:24、ようやく一の瀬の第一エイドに到着しました。ひええ、長かった……
紅葉の志賀高原を往く
ここでロングの部と合流して賑やかになりました。
ロングの部の選手はすでに40km走ってきただけあって疲労の色が隠せず、座り込んでしまっている方や、リタイアを申告される方も散見されましたが、私はミドルなので(しかもほぼ歩いてきたので)さすがに疲労困憊というわけでもなく、持参したチョコバーを流し込んだら先を急ぎます。
というのも、時間がやばいんですよね。まだ距離的には半分以上残っているのに、ここまでで5時間も使ってしまいました。
記事にはしていませんが、この大会の前に同じくKTFさん主催の大会として、8月の「野沢トレイルフェス」に出ていました。その時はあまりの暑さに途中でリタイアしてしまっていたので、さすがに二大会連続でリタイアは嫌だなと…… その意味でも、今日はとにかくゴールだけはしたいという気持ちでいまして、あとはもう制限時間との戦いなのです。
では、飛ばせる限り飛ばしていきましょう!
この後半セクション、出だしの1kmはトラバースの山道で歩きにくいものの
そこを抜ければ、あとはゲレンデと舗装路がメインになります。
このゲレンデは最高に爽快でしたよ!
曇りがちだった空はいつしかすっかり晴れて、鮮やかな紅葉が目にまぶしいです。いいところで写真が撮れていませんけど、山が一面紅葉で染まっているさまは本当に見事で、やるな、志賀高原!と思うとともに、レースの舞台としてこの時期を選んでいるKTFさんはさすがに見どころが分かってるね、と感心しきりでした。
ジャイアントスキー場からは150mほど登り返し、
観光客でにぎわう蓮池を過ぎたら
はい、そこが22km地点の第二エイドです。
後半は楽しいね!
時間に余裕があるのかどうか分からなくなってしまっているので、第二エイドもスルー気味にして先へ。
ちなみに、コース上で自販機が使えるとしたらこの周辺だけだと思います。野沢トレイルフェス同様、今回も自販機使えますよ~と聞いていたのであてにしていた部分があったのですが、結局見つからずに諦める羽目になりました。
第二エイドからは、琵琶池まで100mほど舗装路を下っていきます。
この区間の雰囲気も最高! 傾斜も適度なので快適に走っていけます。
琵琶池まで下りたら池を半周。斜光に照らされる池と紅葉がほんとうに綺麗でした。
そこからは再び山道に入り、旭山をトラバースするように抜けていきます。ここもとても走りやすいトレイルでした。
トレイルランはもちろん、登山やマラソンは一般的に共感を得にくい趣味で、何が楽しいの?と聞かれることはよくあります。そして実は私もそう感じることはよくありまして、登山やマラソンをしていて苦しいときは「なんでこんなことやってるんだろう……?早く家に帰りたい」なんて思うことはしょっちゅうです。
この日も前半の泥沼セクションは正直楽しくはなくて、天気も曇りで寒かったこともあって、なんでわざわざ志賀高原まで来てこんな苦行をしてるんだろう……と思いながら歩いていたものでした。
ですが現金なもので、こうして晴れると途端に楽しくなりますね。気温も上がって陽も差して快適な環境の下では、たとえこれが競技でなくとも自然に走りたくなります。この第二エイド~旭山は、ほんとうに楽しい区間でした。
カウントダウンと共に
しかし、そんなルンルン気分で旭山を抜けたランナーの前に、巨大な壁が立ちふさがります。
それがこのサンバレースキー場のゲレンデ。ブリーフィングでもきついと強調されていたところですが、実際にその「壁」っぷりを目の当たりにすると思わず笑えてくるほどでした。
とはいえ、登らないわけにはいきません。
琵琶池に降りていくときからうすうす思ってはいたのですが、スタート/ゴール地点は標高1,700m、一方琵琶池は1,400mですから、その差300mを残りの区間で取り戻さないといけないのですよね。そのうちのまず150mを、このゲレンデで稼ぐことになります。
でもさすがに疲れてきたのだ……
行動時間に対して摂取カロリーが全く足りない気がしたので、ゲレンデの途中で座り込んで二本目のチョコバーを食べました。結局、レース中に食べたのはこれだけ。よくこれで最後まで走れたな……
座っているので後続のランナーに次々追い抜かれていきます。「お疲れさまです」「ナイスラン」「頑張りましょう」なんて声を掛け合いますが、みなさん疲れていても目は死んでないのですよね。残り6km、私も何とかゴールまでは行かなくては。
走行禁止区間を抜け、田ノ原湿原を抜ける頃には太陽が山の端に沈んでいきました。
ここで残りはあと2km。制限時間9時間(だと思っている)まではあと58分。ゴールできることが確実になってホッと一息。
やがて、木々の間から志賀パレスホテルが現れました。
残り1km、もう走る力はなくなり、早足で歩いていきます。ただ気力を振り絞ってラストスパートをかけているランナーさんから「お疲れさまでした!ナイスランでした
」なんて言われると自分だけ歩いているのは恥ずかしくなり、何となくかっこだけは走っているようなスタイルでゴールに向かいました。
そして、ゴールゲートが見える位置まで来た時のこと。
ロングの部の選手に交じって4名で走っていき、「○○選手、間もなくゴールです!」なんてアナウンスを受けながらゴールゲートに向かっていると、「ミドルの部、間もなく制限時間です」というアナウンスが流れました。
時計を見ると16時59分45秒。8時スタートだったので確かに9時間の制限時間が間近ですが、私はKブロックで30分遅れでスタートしたので17時30分までにゴールすればよいはず。なので、「いや私はまだ30分あるんですよ!」と思いはしたのですが、10秒前から会場の皆さんがカウントダウンを開始されて、その時にミドルの部の選手は私しかいなかったので、ここでダッシュしないと空気読めない奴に見えるよな……と思った私は、無意味(だと思っていた)にラストスパートし、「3、2、1、0!」のコールと共にゴールゲートに駆け込みました。
皆さんから拍手をいただき、いや違うんですけどね、と思いつつ手を振り返して、完走証の受け取りに。
ゴールしました!
— K-TARO (@ktaro_77) 2020年10月18日
昨日の雨で、前半が10km以上泥沼セクションだったのはどうしてくれようかと思いましたが😰
後半セクションは天気にも恵まれ、のんびりとトレランが楽しめました。
スタッフの皆様、ありがとうございました!#志賀高原エクストリームトレイル pic.twitter.com/80gPBKGCf2
ゴールタイムは8時間30分ちょうど。
そして、帰宅した翌日、リザルトを見てようやく気付いたことに、実は制限時間は9時間ではなくて8時間半でした。なのであのカウントダウンはまさに私のためのカウントダウンだったのです。危なかった、あと1秒でタイムアウトになるところだった……!
ゴール後は暖かいキノコ汁をいただいたりしましたが、気温は2℃まで下がっており、走り終えたとたんに低体温症のきざしが出てきました。32kmを走るのにチョコバー2本でエネルギーが足りるわけがないんですよね。
なので速攻で着替えを取りに行き温泉に突撃したものの、その頃にはもう体温を維持できなくて、浴槽の中で30分ほどガタガタ震えていました(^-^;
寒い時期のレースはこれが怖いですね。道中でちゃんと食べられるようにならないと。
大会を振り返って
こうしてギリギリながらトレランとしては自己最長となる32kmを走り抜けることができました。
8月の野沢トレイルフェスが猛暑だったこともあって、序盤は「8月に志賀高原、10月に野沢にすればいいのに……」と思っていましたが、10月を選んでいるのには理由がありましたね。後半セクションの紅葉はほんとうに綺麗で、その光景でだいぶ精神が持ち直した気がします。
これまでの最長距離だった上州武尊山スカイビュートレイル30と比べると、体力的にはこちらの方がだいぶ消耗する印象でした。上州武尊山はトレイルも全般的に緩やかで、その気になれば上位陣は普通に最後まで走っていけるコースなのですが、こちらは第一エイドまでの山岳セクションが普通の山登りレベルなので厳しいです。
なのでお気楽に……という感じではないですが、それでも走り終えた時のやりきった感はくせになりますね。志賀高原は遠いけど、来年も余裕があればぜひ参加したいなと思っています。
最後に、コロナ禍で多くの大会が中止に追い込まれる中、開催にこぎつけるには多くの苦労があったかと思います。このような機会を設けていただいた関係者の方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。
次戦は年内最終戦となる11/14の南伊豆町みちくさウルトラマラソン。
完走はできないと思いますが、今年の集大成として、できる限り頑張ります。