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登山とマラソン、ときどきゲーム

第7回 白山白川郷ウルトラマラソン

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2019年9月8日。

石川県で開催されたウルトラマラソンに参加してきました。自身初の100kmへの挑戦。実力に見合っていないレースなので、途中の関門でのリタイアが想定されますが、果たしてその結果は……

 

と、その前に。

春~夏シーズンは体調不良のため、最終2レース(黒姫トレイルと志賀高原)はDNS。結局、エントリー12レースに対して参加は6レースにとどまりました。う~ん無念。秋はもっと参加できるようにうまく病気と付き合っていかなければ。

 

さて、今回は情けないことに第一関門にてマッハでリタイアしてしまいました。ただ、エントリーから出走まで、細かく紹介しているブログが見当たらなかったので、前置きを含め、それだけ書いておきます。

レース本編までが非常に長くなってしまったので、大会の内容だけを知りたい方は目次の「涼しくない、すでに不安が……」をクリックして飛んでください。ちなみに本番の様子は一瞬で終わります(^-^;

 

 

大会に出るには…… 

まず、ここからは今大会に参加した経緯と、レース前の様子を書いていきます。

ことの起こりは夏シーズンも中盤にさしかかり、秋シーズンのレース一覧を眺めていた時でした。 ふと気づいたのです。今の走力では完走できるレースが少ないな……と。

例えば、秋にはウルトラマラソンが多数あります。でも100kmのレースは大抵制限時間が14時間以下で、これは今の自分ではゴールできない計算です。また一方、フルに出ようかと思うと、地元の大田原などは制限時間が4時間で、これまたゴールすることができません。

 

私はいわゆる”ランナー”ではなく、走っているのはあくまで登山の体力づくりのためです。走ることが大好きってわけではなく、他に趣味が多数あるので練習にもほとんど時間を割いていません。ではなぜ大会に出ているのかと言うと、マラソン大会というイベントが好きだからです。今や、いろんな大会に出場するのが楽しみで、それが走る目的になっている感があります。

しかし、今の実力ではゴールできるレースが限られます。そこで、夏シーズンが終わったら秋までは少しだけ練習しようと思いました。それで秋シーズンは出たいレースに出てみて、ゴールできなければそれは練習量が足りなかったか練習の内容を間違えたということなので、それを今後に活かそうと。

ということで夏場は少しだけ練習はしていました。と言ってもしょせん付け焼刃で、できることは限られますから、スピード練を中心に。一か月練習したところでどうにかなるものでもないですけど、最初は1km全力でもキロ5分ジャスト(遅すぎ……)だったのが、キロ4分20秒までは縮まりました。遅いのには変わりありませんけど、やらないよりはましだったかな? あとはシーズン中も継続していきましょう。

 

スタート地点、現地へのアクセスなど

そうして選んだ秋初戦は「白山白川郷ウルトラマラソン」。この大会、回を重ねるごとにコースや条件が変わっていて、以前は50kmや70kmの部門があったり、白山白川郷ホワイトロードの往復だったりなどしていましたが、現在は部門は100kmのみ、コースは白川郷から白山市までのワンウェイになりました。

秋初戦がウルトラでしかも未踏の100kmという時点で無謀なのですが、ワンウェイなのと、他に適当なウルトラが見当たらなかったので挑戦してみることに。ゴールできなかったとしても、少しは経験が積めると期待してのエントリーです。

 

さて、その白山白川郷ですが、自家用車で現地に向かう場合、前日受付はスタートの白川郷、ゴールの白山市(松任総合運動公園)のどちらでも行うことができます。当日の駐車場も双方にあります。

ここで、ランナーさんの過去のブログを見ていると、ほとんどの方が白川郷側での宿泊、もしくは車中泊で当日に臨んでいるようで、白山市側の様子がよく分かりませんでした。しかし私は松任総合運動公園にゴールした後は即ホテルに向かい、翌日は北陸自動車道で帰りたかったので、白山市側から参加することにします。

この場合は、当日は車を白山市側に停めるので、ランナーはスタート前の深夜に白川郷までツアーバスで運んでもらうことになります。そこで、大会へのエントリーと共に、ツアーの申し込みも済ませておきます。(松任総合運動公園→寺尾防災グラウンド:¥3,000)

※大会HPのツアーの申し込みへのリンクは場所がわかりづらいですが、頑張って探しましょう。ちなみに今年はリンク先が間違っていて「ご指定のページは表示できません」とか表示されてました。おい、大丈夫か(笑)

 

34℃……!? 嘘だろ……

そうして迎えた大会前日。大会は日曜日ですが、受付は前日のみ、そしてレース後は現地に泊まるので月曜日を有給にし、二泊三日での遠征になります。では、いざ出発……と言いたいところなのですが、そこで私は衝撃の光景を目にすることになります。そう、それはウェザーニューズで金沢市の日曜日の天気を調べたときでした。フェーン現象により、天気は晴れ、そしてそこにあった最高気温の数字は34℃

……34℃!? はあああ、嘘でしょ……!?

 

2016年、2017年大会も同じく晴れで、灼熱の白川郷なんて呼ばれていましたけど、そのときの最高気温は約29℃でした。コースの後半は日影がないので29℃は相当キツイのですが、9月初旬なので29℃はまだ分からないでもないです。しかし34℃とは……

私は初秋のレースに備えて、夏の間は一応暑熱順化ランを試みたことはあります。しかし例えば30℃でも10kmで2Lも発汗するありさまで、それ以上走ったら生命の危機を感じるほど。今回はそれがウルトラで、しかも4℃も高いことになります。いや、どう考えても無理でしょう……

ということで全然乗り気ではなくなってしまい、よっぽど行くのをやめようかと思ったのですが、宿のキャンセルも面倒ですし、挑戦しないで投げ出すのもな……と思ったので、一応現地には向かうことにしました。

 

賢明なレギュレーション変更

そうした現地への7時間のドライブの間、考えていたのはこのようなケースでの運営の対応についてでした。

マラソン大会が事情により中止になることはままあります。しかしそれはほとんどの場合、台風などでランナー、エイドスタッフなどの安全が確保できないケースです。では今回はどうかといえば、天気は晴れですから単純に「危険」とは言いがたいですし、この気温でも完走できるランナーは大勢いますから、中止にするのは困難でしょう。

しかしこのまま強行すれば、熱中症で倒れるランナーが続出するのもまた容易に想像できます。そうして倒れたランナーはあくまで自分の意志で走った結果なのですから、本来はそのランナー個人の自己責任ですし、運営が責任を問われるのは筋違いだと思いますけど、残念ながら今の日本の社会はそうなっておらず、もし死者でも出ようものなら運営が無謀だったと袋叩きにされることでしょう。

これ、自分が運営だったらどうしよう、どっちに転んでも文句が出るよな…… そんなことを考えながら道中でネットを見ていたところ、ルールの変更がアナウンスされていました。

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おー、考えましたね、なるほどね!

読んでいただければ分かる通り、最低59.8km走れればゴールとして認めるよ、ということですね。これはリスクマネジメントとして大英断だと思います。

上で書いた通り、私はランナーが無理をして失敗したならそれはランナーの問題だと思っています。しかしながら、「夏の間、頑張って練習してきたんだから……」「少ないお小遣いの中からエントリーフィーを捻出したんだから……」などなど、ランナー側としては簡単に諦められない気持ちもわかります。

ですので従来ルールのままだったら、辛いけどなんとか100kmのゴールまで……!と思ってしまい、結果途中で倒れるランナーが相次ぐことになるでしょう。しかしこのルールであれば、59.8kmを越えたところで、断腸の思いだがここで止めよう、と思いとどまるランナーが相当数出ると思います。それはすなわち、大会全体としてのリスクを有意に低減させることにつながります。

一応書いておくと、私は運営のランナーズ・ウェルネスという会社が好きではないので、運営を擁護するつもりは一切ないです。しかし、少なくともこの判断は正解だったと考えます。

 

前日受付、そして本番会場へ

15時過ぎに松任総合運動公園に到着し、前日受付へ。

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ここでゼッケンなどを受け取り、宿泊先のホテルに向かいました。

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今回のお宿はこちら、ホテルルートイン美川インター。松任総合運動公園付近のホテルは空きがなかったので、少しだけ離れたこちらへ。三日間お世話になります。

6時間ほど寝たら、装備を整えて再び松任総合運動公園へ。市役所の駐車場に車を停めて、バス乗り場へ向かいました。

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申し込みページへのリンクが間違っているくらいなので、こちらから参加するランナーは相当少ないのかな……なんて思っていましたけど、いざ行ってみたら数百人のランナーが列をなしていてビビりました(^-^; みんな、よくあの間違えリンクから申し込みページにたどり着けたなw

 

涼しくない、すでに不安が……

バスは松任総合運動公園を2時に出発し、スタート会場となる白川村(寺尾)防災グラウンドに着いたのは3時15分。

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長くなってすみません、いよいよ本番の様子に移ります。

会場はご覧の通りコンクリートの広場。更衣テントあり、給水やおかゆなどの補給コーナーあり、トイレも男女共用18、男性小用10基くらいで必要十分。(雨はしのげないので、雨の時は何らかの対策が必要です) ここで59.8kmエイド、およびゴールへの荷物預けを行います。

用意が済んだら後はスタートを待つだけ。ちなみに例年はここの気温は20℃を下回り、何らかの防寒着があった方がいいようですが、今日は半袖Tシャツでちょうどいい気温。早くも暑さへの不安がよぎります(^-^;

給水はしっかりすること、無理をしないこと、気温が35℃、36℃と上がっていくようなら中止もありうること、そんなアナウンスが繰り返され、そして5時、100kmの旅路への扉が開かれました。

 

展望は最高

会場を出たら、まずは白川村をぐるっと。

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この頃は当然皆さん余裕なので、合掌造りの民家などで記念撮影されたり、楽しげな雰囲気で走っていきます。沿道にはこんな時間から応援して下さる方々の姿も。ありがとうございます!

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空気は澄んでいますし、刻々と色を変える空が美しく、ああ、こんな中だったらいつまでも走っていけるのになぁ……なんて考えながら進んでいきました。

 

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でも、そんな楽しい時間は瞬く間に過ぎ、4kmあたりから道は上り基調に。そしていよいよ序盤の文字通り山場となる「白山白川郷ホワイトロード」に入っていきます。

標高500mから1,445mまで、945mの上り坂がひたすら続くこの道。ここをどうクリアするかが後半に響いてくることでしょう。ゲート前のエイドでコーヒー牛乳を一気飲みし、さて、では行くか!と気合を入れて……

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当然のように歩いていきます(^-^;

周りを見ていた感じだと、だいたい三分の二くらいのランナーさんはここでも走っていけるようでした。この上りは長いので、タイム狙いなら走っていけるに越したことはないですよね。私は完走が目標ですから、パワーは後半までセーブしておくことにしましょう。

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それにしても展望は見事でした。

この日は空がクリアで遠望が利いたので、遠くの山並みまでクッキリと。あー、山に行きたいなー!なんて思いながら先へ。

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ただ、やっぱりこの上りはきつかったですね。

この写真もそうですが、コーナーを曲がるたびに前方の上方にこれから登っていかなければならない道が見えるので、おいおい、どこまで続くんだよ……と笑えてきます。周りのランナーさんたちもだんだんと無言にw

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それでも、2時間40分ほどでようやく終わりが見えてきました。

これは標高およそ1,400mにあった気温計。22℃なので、ここでは風は涼しかったです。例年通りの気温なら歩いていると寒く感じるかも。

しかし1,400mで22℃ということは、標高0mではプラス8.4℃、つまり30℃オーバー。まだ8時にもなっていないのに30℃オーバー? ……考えないことにしよう(^-^;

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そして7時50分、ようやく最高地点である標高1,445mの三方岩駐車場に到着。

約17.8kmを2時間50分ですからペースはキロ9分30秒を越えていますが、それはこの先の下りで取り返せるはず……!

 

暑いのかなぁ……?

県境のトンネルを抜けて、岐阜県から石川県に入ります。そして道は待望の下りへ。

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凄いと思いません?この展望!

 

ここまでのうっぷん晴らしの意味も込めて、ここは全開で駆け下りていきます。そうは言っても所詮は私なのでキロ5分台ではありますが、ウルトラでキロ5分台で走れることなんてそうそうないので、気分爽快!

そう、このコースレイアウトがこの大会を選んだ理由の一つでもあります。最初の1,445mまで上り切れば、あとは基本的にゴールまで下り基調。100kmを14時間で走るためにはキロ8分24秒を維持する必要がありますが、ずっと平坦な道を走っていくよりも、こうして下り坂パワーを得られる方が私には向いている気がしました。使う筋肉も違いますしね。

 

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ということで、4kmほどの間は快調に下れていました。このホワイトロードを抜ける前に通算ペースをキロ7分台まで落とそうと、そうすれば第二関門は余裕で抜けられる、あとは根性でせめて第三関門までは行きたい、暑くなりきる前なら何とか……そんなことを考えていました。

 

ところが、24km過ぎ辺りで異変が。

突然だるくなったというか、走るのがすごくつらいように感じてきたのです。あれっ、これ何だろ……?

疲れてきたというには早すぎます。かといって暑いのかといえば、まだ気温は25~26℃くらいしかないはず。でも考えられるのは暑さくらいだよな……と思ってコース沿いの沢でウェアを冷やしてみたりしたのですが、状況は全く変わらず。

それで結局全然走れなくなってしまったのですが、25.9kmのエイドで冷やしそうめんをいただいたら、しばらくして徐々に復活。

今のは何だったんだ……? ミネラルバランスが崩れていたのか、もしくはやはり暑くて、内側から冷やされたのが効いたのか、ですかね。ともかくこの冷やしそうめんには救われました。ここは自動車専用道なのでコース上に自販機がなく、冷たいものを自力で手に入れられないので、この冷たさはとても貴重でした。スタッフの皆さん、ありがとうございました。

 

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そんなこんなで、ともかくホワイトロードは抜けました。

ただ、先ほどのアクシデントでだいぶタイムをロスしてしまい、ここまでの平均ペースはキロ8分38秒。ここからペースを上げられないとすると、第二関門こそ抜けられますが、第三関門(キロ8分30秒)でアウトになることに……

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そうして迎えた第一関門。閉鎖まであと18分あって、タイム的にはまだ行ける。

でも、心が折れてしまいました。

 

リタイアバス(10:15頃出発)を待つ間、他のランナーさんが諦めずに走っていくのをぼーっと眺めて。

 このエイドから被り水が用意されていました。柄杓で頭から水を浴び、再び走り出す…… この時間にここを通るということは、やはりあの方々も第二関門が限界だと思います。でも諦めていない。自分とあの方々のこの差は何だろうな、と思いながら……

 

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預けた荷物を受け取るために、バスはいったん59.8kmエイドに立ち寄り。

時刻は11時ちょうど、スタートから6時間でしたが、早くもここを通過していくランナーさんが沢山いて、そしてそのうちの何名かはリタイアされていました。

11時にここを通れるということはサブ10ランナー、そしてそのサブ10ランナーですらレース続行を断念するこの気温。道中の温度計はすでに30℃を越えており、バスの車内にいてすら感じる外の猛烈な熱気。もし第二関門を抜けられたとしても自分は絶対にここにはたどり着けなかったなと思うとともに、サブ10の実力がありながらリタイアを決めたランナーさんたちの判断力には敬服する思いでした。

 

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スタート地点に帰り着き、チップを返して荷物を受け取って、私の大会は終わり。温泉に立ち寄って冷水泉で体を十分に冷やしてから、ホテルに戻りました。

 

大会を振り返って

まず、この異常な暑さの中、親身になって対応していただいたスタッフ・ボランティアの方々、沿道で応援してくれた方々、本当にありがとうございました。過酷な状況であるからこそ、皆様の協力なくしては走れないんだと身に染みる思いです。どのエイドの方もとても良い印象でした。大変お世話になりました。

次に、非常に高いリスクのある中、大会を実施してくれた運営の方々にもお礼申し上げます。一部のランナーから理不尽な非難があるかもしれませんが、私は今回のルール変更は多くのランナーを危険から救った、大英断だったと思います。

www.r-wellness.com

リザルトはこちら。完走率39.0%はウルトラマラソンでも例を見ない低さですが、私としてはむしろ431名もの方があの中を走り切ったという事実に驚愕です。夏場の努力の賜物ですね、ゴールされた皆様、おめでとうございます。

 

最後に自分については、もうこれは何もかも足りませんでした。その中であえて挙げるとすればやはり暑さ耐性でしょうか。例年よりは頑張ったつもりでしたけど、全然足りていませんでした。 来年こそ、サボらずにもっと練習してきます。そしてまたここに戻ってきます。次こそは白川郷から日本海までたどり着けるように。