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登山とマラソン、ときどきゲーム

甲斐駒ヶ岳 1日目

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2018年7月14日。

2年ぶりのテント泊、その舞台として選んだのはこちら、南アルプスの名峰・甲斐駒ヶ岳。

2011年に北沢峠から挑んだ時は水不足で敗退。今回は黒戸尾根からの挑戦です。果たしてリベンジは成し遂げられたのでしょうか……?

 

★ 1日目 7/14(土) 【 尾白川渓谷 → 七丈小屋 】

2018年の海の日の三連休は、全国的に好天の予報。

各地の山には登山者が殺到し、金曜昼の時点で新穂高の無料駐車場が埋まったなんて恐ろしい情報も流れていましたが、そんな混雑の中でもあえて行きたかった山があります。

それがこの甲斐駒。昔から憧れていた山でありながら未踏のままで、5年ほど南アルプス自体に行っていなかったこともあり、ぜひとも今年は登りたいと思っていた山でした。

そして、どうせ行くのなら北沢峠からではなく、黒戸尾根から、とも。日本三大急登の一つに数えられるこの黒戸尾根は、その長さも考えれば一般登山道としては日本で一二を争う厳しさを誇りますが、今の脚力なら行けるはず! 七丈小屋のテント場にも一度テント張ってみたいですしね。

ということで、土曜の早朝、自宅から350kmほどもある尾白川渓谷に向かったのでした。

 

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予定より少し遅れて、尾白川渓谷の駐車場に着いたのは5:50。

この三連休は高気圧に覆われて広く晴れますが、同時に猛暑も予想されています。この駐車場は標高780mほどなのに、すでに汗ばむくらいの気温。先行きに不安が残ります。

さてさて時間はないぞ! 今日は七丈小屋のテント場までの行程ですが、それでも1,600mほど登らねばなりません。コースタイムは6時間40分、久々のガチ登山ですから気合を入れていかないと! 6:24、駐車場を出発。

 

ひたすら樹林帯を行く

駐車場を直進して竹宇駒ヶ岳神社を抜け、吊り橋を渡ると登山道に入ります。

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(吊り橋を渡ったところの案内板ではなぜか登山道が右矢印になっていますが、無視して正面の直登に取りつきます)

ここからはひたすら樹林帯を行きます。南アルプスの森林限界は高いので、今日は七丈小屋までずっと樹林帯が続くことに。6時間40分歩いても樹林帯を抜けられない、なんて経験は初めてです。う~ん、さすがは南アルプス、スケールが違いますね!

傾斜は”急登”と言うほどではないですが、それでいてゆるくもない登りを淡々と登っていきます。

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この樹林帯――特に序盤、笹ノ平分岐までの2時間半の登りは、単調でつまらないという意見をよく耳にします。しかし私は南アルプスに来たこと自体が久しぶりということもあって、最初はそれなりに楽しい気分で登っていました。

 

樹林帯も、地域によって雰囲気が違うものです。植生に詳しくなくても、いつも登っている北関東や東北の山とは違うな、というのは私にも分かりますし、そういう意味では新鮮な気分でした。

 

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ただそれも、疲労してくるにしたがって余裕を失っていきます(笑)

高度を上げていくと徐々に植生が変わってきて、気づけば周りはクマザサに囲まれていたりするので、ああ、1,500m近くまで登ってきたんだな、なんて思ったりはしますが、考え事を2時間半続けるにはネタが足りないんですよね。

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なので、笹ノ平分岐に着くころにはもう精神的にも疲れてきました(^-^;

時刻は8:45。駐車場から2時間21分ですから早くもコースタイム通り(つまり、以後は遅れるということ)になっていますし、ガスっていて暗いので、気分も微妙に落ち気味に。

 

刃渡りからが正念場

その後も、見通しのきかない樹林帯を黙々と登っていきます。

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ガスはいよいよ濃くなって、雨が降るんじゃないかと不安になるほどに。なんか、いつも南アルプスはこんな感じになりますね(^-^;

 

でも、ここまではしょせん体力勝負でしかないので、まだ良かったのです。

八丁坂という急登地帯を抜け、刃渡りまであと30分くらいかな、いやもっとか……?なんて考えていたら、地図読みを間違っていたらしく

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いきなり目の前に刃渡りが現れました。予想していなかったのでちょっとビックリ。

 

この刃渡りと呼ばれる岩場は、両サイドがどちらも奈落なので、山と高原地図では唯一(危)マークがついているところです。ただ、今は鎖がありますから普通は落ちないでしょうし、うかつに下を見なければ(特に左は絶壁なので見ないように!)、高所恐怖症持ちでもそれほど苦労せずに抜けられると思います。

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ですが、むしろ怖いのはそのあと。

 

刃渡りを過ぎるとしばらく痩せ尾根が続き、それから鎖・梯子が出てきます。この山の鎖は全般的にそれほど怖くないんですけど、梯子はどれもこれも怖いんですよ、これが……

落ちたら死ぬ梯子が結構多いうえに、上の写真のもですが、なぜか軒並み落ちる方に傾いてまして。反対側に傾けてくれよ!と心の中で叫んでいました(笑)

  

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なので、刀利天狗を過ぎてこうして危険性のない道になると心底ホッとします。ここまでの疲労も忘れて、あ~、こんな道だったらずっと歩いててもいいんだけどな、なんて思ったり。

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それに、この辺りはコケがすごく綺麗で!

北八ヶ岳には及ばないかもしれませんが、この南アルプスも霧が濃いためかコケの宝庫になっています。自分がアクアリウムをやっているから余計にそう思うんでしょうけど、アクアリウムやテラリウムが趣味な方にはもうたまらない光景でしょうね。

 

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登山道は一旦下って、やがて五合目小屋跡へ。(12:01)

正面に尾根が見えていますが、こうして視界が開けているのは刃渡りとここだけです。こんなに何にも見えない登山道は初めてだ……(^-^;

 

肉体は死なないけど精神が死ぬ!

ここから小屋までは残るところ1時間10分。もう着いたようなもんだな!と思いました。

しかし、ここからが今日の行程の核心部だったのです。

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降りきったところから長い梯子で登り返し。

ここからひたすら梯子と鎖のオンパレードです。まだ前半は何とかいけるのですが

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この橋からが高所恐怖症持ちにとって地獄の始まり。

 

ここから小屋までは30分ほどでしたが、この間の写真は一切ありません。説明用にはむしろ撮りまくるべきところなんですけど、そんな余裕はまったくありませんでした。

 

とにかく梯子がね、梯子が怖いんですよ! (´;ω;`)

刃渡りじゃなくて、こっちに(危)をつけるべきだろ!と思うくらい、その恐怖感たるや刃渡りとは比べ物になりません。

特に山行記でよく言及される「垂直の梯子」のところはもう気絶しそうなほど。梯子そのものはそれほど長くもないですし、ちゃんと三点支持を守っていれば、梯子と梯子の切り替え部以外では落ちるはずはないです。しかし、梯子の下に地面はないから、もし滑ったらそのまま何十メートルか何百メートルか落ちていくんだよな……と考えてしまうともうダメ。実際には落ちてないから肉体は生きているんですけど、精神は一足先に死にそうです。大した運動量でもないのに心臓はバクバクで、冷や汗もダラダラ。ホント、消耗しきりました……

 

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なので七丈小屋にたどり着いたときは本当に安堵したものです。死なずにすんだ……!

 

到着時間は13:26と、コースタイムオーバーの7時間2分もかかりましたが、まあ着いたからいいことにしましょう。

早速テントの申し込みをしてテント場へ。「混んでますから端から詰めて張ってください」と言われた通り、小屋から5分先にある第一テント場も、更にそこから2分先にある第二テント場も大賑わいでした。自分はまだ張れたので良かったですが、15時過ぎに到着した方々は張れなかったかも。

 

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こうしてテントを張ったら、もう今日の行動は終わりです。

せっかく晴れているのに山頂に行かないなんて……と思われるかもしれませんけど、山頂までは登り2時間半ですから、今の疲労度ではちょっと無理がありそうです。いずれにしても明日の朝には登るわけですから、今日はやめておきましょう。

 

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第一テント場から鳳凰三山を望んで。

今回は混んでいたのでちょっとアレでしたが、この七丈小屋のテント場は、この標高にしては過ごしやすいテント場だと思います。地面は平坦ですし、夏場はあまり風も強くならなさそうですしね。東側斜面にあるので日が陰るのも早く、夕方は涼しく過ごせました。

唯一の難点は小屋が遠いことでしょうか。トイレも水場も小屋にあるので、何かにつけて小屋まで往復せねばなりません。登山道もサンダルで歩くのはちょっときつくて、鹿島槍の冷池を彷彿とさせる道でした。まあ、山中ですからね、このくらいの不便はしょうがないか。

 

さて、明日は早起きです。できれば山頂でご来光を迎えたいので、2時には起きなくては!

山頂まで往復した後に下山するのはなかなか大変そうですが、頑張っていきましょう。