Infinity

登山とマラソン、ときどきゲーム

双六岳・笠ヶ岳 (北ア南部周遊7日間) 5日目

f:id:k-taro77:20180108205134j:plain

2015年の夏に北アルプス南部を7日間かけて歩きました。
その5日目の記録です。

 

★ 5日目 7/30(木) 【 槍ヶ岳山荘 → 双六小屋 】

5日目、運命の西鎌越えの日。

そんな5日目は、風雨の中で目覚めを迎えました。

 

……なぜ毎年毎年、西鎌越えの日は嫌がらせのように雨が降るのか……

 

ただ、今年の風雨は例年に比べれば大したことはありません。それに、天気予報を信じるならば雨は一過性だと考えられます。

そこで(今日は双六まで行くだけですし)できれば雨上がりまで待って、そこから行動を開始するのが上策だと思うのですが、この槍ヶ岳のテント場には「チェックアウト」という制度があって、7時にはテント札を返却しなければなりません。

f:id:k-taro77:20180108210300j:plain

時間ギリギリまで粘ってみましたが、さすがにそう簡単に雨は止まず。
ただ、ほんの一瞬ながら青空が見えることもあって、天気好転の兆しは感じられました。
この天気なら行けるでしょう! 6:49、山荘前から出発。

 

エスケープも視野に入れて

f:id:k-taro77:20180114114441j:plain

西鎌への降り口はこの有様。いや~、やる気が出ますね~(^-^;

晴れの予報とはいえ、予報は予報。最悪の事態に備えて、エスケープルートを意識しながら歩いていきます。

f:id:k-taro77:20180114114620j:plain

そんな序盤、左手の霧の向こうに時折姿を現すのが、最初のエスケープルートだった飛騨沢への道。

テン場でご一緒した方々の何名かは、今日はそちらから下山するとのことでした。"自分も向こうに行けば良かった"なんて思う展開にならなければいいのですが……

f:id:k-taro77:20180114114913j:plain

頭上の雲は思ったよりも厚く、簡単には晴れそうにないですね。

f:id:k-taro77:20180114115046j:plain

8:01、千丈乗越に到着。

決断をするならここです。ここで飛騨沢に降りるか、奥丸山経由でわさび平に向かうのが最後のエスケープルートで、そうしないのなら双六まで行くしかないことになります。

風雨は収まっていませんけど、今年は行けそうです。双六を目指しましょう!

 

苦難も楽しみに

雨に打たれながら、淡々と進んでいきます。

f:id:k-taro77:20180114115948j:plain

ご覧の通り景色は見えませんし、”楽しい登山”をしたいと考えるならかなり悪いシチュエーションです。いくら西鎌がそれほど難易度の高くない道だといっても、道中には鎖場も痩せ尾根もあるわけで、危険性も上がります。

f:id:k-taro77:20180114120505j:plainでも……

なぜか、この日の行程はつまらなくはなかったんですよね。

 

今回の縦走はここまでほとんど晴れでした。もちろん景色を楽しむには晴れるのに越したことはなく、ラッキーだったのは確かですが、長い縦走がずっと晴れというのも、それはそれで山の一面しか見れていない気がします。

f:id:k-taro77:20180114120930j:plain

その昔、遭難事故に対して、山岳救助隊の方が語っていた言葉があります。

「晴れた登山だけを何年も続けていても、それだけでは山のベテランとは言えない。雨の日も雪の日も登って経験を積んで、初めてベテランと言える」

もう古い記憶なのでうろ覚えですが、ニュアンスは合っているはず。

f:id:k-taro77:20180114121535j:plain

これは本当にそう思います。

一昨年の裏銀座縦走はほとんど雨で景観の楽しみは全くありませんでしたし、決して面白い縦走ではありませんでしたけど、あの雨の中で曲がりなりにも烏帽子小屋から新穂高温泉まで歩き通せたことは、自分にとってはとても大きな経験になったものでした。

f:id:k-taro77:20180114121816j:plain

だから…… 縦走中ずっと雨、は勘弁でも、一日くらいはこんな日があってもいい。

というよりもむしろ、こうして晴れの日も雨の日もあってこそ、より縦走が味わい深いものになるのではないかと思います。

f:id:k-taro77:20180114122418j:plain

以前NHKで放送された「夏の北アルプス あぁ絶景!雲上のアドベンチャー」という番組の中で、最初は疲労で辟易していたNHKの内田アナが、大雨の中、薬師岳から太郎平まで進んだ時に、

「つらいのを通り越して、逆にわくわくするような気分にさえなりました、僕は。いやぁ、初めてだ」

と言っていましたが、その気持ちは今ならよくわかる気がするのでした。

f:id:k-taro77:20180114123722j:plain

そんな雨も、樅沢岳に近づくころにはほとんど止みました。

結局、道中の鎖場などでは思ったほど苦労することもなく、 11:06、無事に双六小屋に到着。CT 4時間20分のところを4時間17分でしたから、意外とまともに歩けたようです。まあ西鎌の経験は豊富ですからね(笑)

 

ようやく越えられた西鎌

木曜日の午前中では、さすがに交通の要衝たるここのテント場もがら空きでした。場所は選びたい放題で急ぐ理由もなかったので、まず先に外の食堂でラーメンをいただきます。

f:id:k-taro77:20180114124527j:plain

雨の中を歩いてきて冷え切った身体に、ラーメンの温かさが染み渡っていく…… 至福の一杯でした。

 

 

私の登山記には"疲れた"というワードがそこら中にちりばめられています。他の方のブログなどを見ていても、ここまで疲れたと書いている登山者はそうはいないようです。

 

もちろん山登りですから、他の方々も程度の差こそあれ疲れてはいるのでしょう。でも、登山の喜び ――それは例えば道端に咲く花の美しさであったり、雄大な展望であったり、登頂を成し遂げた時の達成感であったり―― がそれ以上に大きくて、多少の疲れなど消し飛んでいるのかもしれません。

 

しかし私は(山行が自分の体力に見合ってない面もあるとは思いますが)疲れたという記憶は結構強く残っていますので(^-^; あえてそこは書いていきます。

読んでいてうんざりする方もいらっしゃるかもしれませんが、登山というのは必ずしも楽しいだけのものではないですからね。陽があれば陰もあるもの。他の方々が陽を担当するのであれば、自分は陰を担当しようかと(笑)

 

ただ、今回の山行で、この日だけは疲れを感じませんでした。

下り主体とはいえ7kmの距離を4時間歩いているわけですから、初日や2日目よりも大変なはずなのに、不思議と気分は爽快。

この時に明確な達成感などは感じていなかったのですが、一昨年、昨年と阻まれてきた西鎌越えを遂に達成できたということは、無意識ながら自分にとってとても嬉しいことだったのかもしれません。

f:id:k-taro77:20180114124543j:plain

食事を終えたら、いつもの場所にテントを設営します。ここにテントを張るのはなんと6回目。もう場所選びも手慣れたものです。

 

どちらかというと天気の悪い日に来ることが多いこのテント場ですが、それでもここに来るとホッと一息つくことができます。

敷地は広く、鞍部ですから吹き飛ばされて谷底へ……なんてこともありません。水は無料だしトイレも多く、いつ来てもスタッフの方々は感じがよい方ばかり……と、過ごしやすさにかけては北アのテント場の中でもかなり上位に属するのではないかと。

 

景観に優れてはいないけれど、過酷な山旅の中で安堵感を得られるこのテント場。この場所にこのテント場があることで、自分の山旅はずいぶん助けられているんだなぁ、と思うのでした。

f:id:k-taro77:20180114124618j:plain

夕方になるとだいぶ青空も広がってきましたが、それでもたまに通り雨があったり、稜線はずっとガスの中だったりしたので、今日の行動はこれでおしまい。

明日は最後の目的地・笠ヶ岳を目指します。天気予報は晴れ。今年はついに弓折の稜線で展望を満喫することができるのでしょうか……?