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登山とマラソン、ときどきゲーム

双六岳・笠ヶ岳 (北ア南部周遊7日間) 1日目

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2015年7月26日。

今年も訪れた夏休みの長期連休。

例年であれば大縦走に挑むところですが、今年は少し思うところがありました。
自分はなぜ山に行きたいのだろう、と改めて考えてみたのです。

確かに長い距離を踏破して、自分の限界を見極めてみたいという気持ちもあります。
でも、本来は山が好きだから、山にいるのが楽しいから山に向かっていたはず。
最近はそれを少し見失っていたかもしれません。

ならば今年は、挑戦という言葉は少し横に置いて、まずは山にいられることを目一杯楽しめるような、そんな山旅にしようと思いました。
そう、今は夏休みなんです。"休み"はのんびりしないとね!
そんな想いを胸に、今年も北アルプスの地に足を踏み入れたのでした。

今回は、普通の人はまずやらないようなコース取りをしています。
ですので全体を通してのプランニングは皆様の山行には役立たないことでしょう。
興味のある区間だけ読んでいただければ幸いです。

 

★ 1日目 7/26(日) 【 新穂高温泉 → 西穂山荘 】

前日の土曜日から夏休みは始まっています。
しかしそこは無計画な自分のこと、金曜日にパッキングが終わっているはずもなく、土曜日からいきなり山には入れません。
まあ、仕事の疲れもありますしね。無理は禁物。

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ということで、日曜の早朝に自宅を出発。
今年は一昨年とは違って週間天気予報も良く、梓川SAから見る北アルプスもご覧の通り快晴です。
お、今回は幸先のいい出だしかも!

  

さて、今年はどこに向かうのか、と言いますと…
プランニングを考えた時に、行ってみたい/やってみたいと思った候補は以下の通りでした。

1. 双六から笠ヶ岳への稜線を歩きたい
2. 南岳から槍ヶ岳への稜線を歩きたい
3. 槍ヶ岳にテントを張りたい
4. 槍沢ルートで槍ヶ岳に登ってみたい
5. 大正池を散策してみたい
6. 新穂高ロープウェイに乗りたい

これで、まず行き先は北ア南部に決定ですね。
次に詳細なコースを考えてみると、2だけ我慢すれば他は全て繋げられそうです。

で、最終的に決まったコースは
「新穂高温泉からロープウェイで西穂山荘に行き、上高地に降りて槍沢から槍ヶ岳へ、そして双六から笠ヶ岳まで歩いて新穂高温泉に戻る」
になりました。
穂高の周りを反時計にぐるっと回る形になりますね。

コース自体はそれなりに長丁場ですが、これを6泊7日かけてゆっくり歩いてみようと思います。
冒頭で述べた通り今回は挑戦ではないので、疲れがたまったら途中でエスケープすることも視野に入れ、頑張りすぎないように。

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もはやおなじみの鍋平園地駐車場着、10:40。
ずいぶんゆっくりですけど、今日は西穂山荘に行くだけなので、これでOKなのです。

初の一週間におよぶ縦走。
ここに戻ってくるのは一週間後か… と思うと、楽しさ一辺倒というわけにもいきません。
北アに来られた喜びと、長い山旅への緊張感を抱えつつ、10:56、駐車場を出発。

 

本日は晴天なり

ここからは道路を道なりに上って、ロープウェイのしらかば平駅へ。

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新穂高には何度も来ておきながら、実はこの第2ロープウェイに乗るのは初めてなのです。
大勢の観光客に囲まれ、こちらも観光客気分でゴンドラに乗り込みます。

7分間の空の旅を終え、人波に押し流されるように展望台に出てみると…

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目の前には、クリアに晴れ渡った笠ヶ岳の姿が。

おおおお ( ゚д゚ )
こりゃ凄い、今日は絶景だわ!

ここの展望台のライブカメラはよく見るのですが、こんなに晴れているのは珍しいです。
(もっとも、ライブカメラを見る=家にいる=天気が悪いから山に行かなかった、ということですので、晴れているのを見ることが少ないのは当たり前ではあります。それでもたまに晴れていることがあって、行けば良かった!と悶絶するのですがw)

夏とは思えないほどの空気の澄みっぷりに、周囲ではスマホのシャッター音が途切れることなく鳴り響きます。
撮影した画像を見て思わず笑みがこぼれる… そんな姿がそこかしこに。
皆さん、最高の日に来られて良かったですね(^-^)

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西穂もくっきりと。
今日のゴールである山荘も、人影が見えるのでは?と思うほど近くに見えます。
さすがに今日は楽勝かな!

 

言ってしまったからには…

さて、登山者たる私としてはここからが旅の始まりです。

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駅4Fの脇にある水場で給水させていただき…

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12:08、登山口を出発。

 

ここから西穂山荘までは標高差およそ330m、距離2km、コースタイム1時間30分。
縦走初日はいつもペースが上がらないので、今回は余裕のコース取りにしてみました。

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登山道はずっと樹林の中ですが、暗くはなく爽やかな雰囲気です。
足下の整備も良く、登山道としては何も問題ない道でした。

 

ただ、ここで早くも問題発生。

 

北アの縦走の時にどういうレイヤリングにしていたかは毎年忘れてしまっていて、今年は長袖アンダー+半袖Tシャツを着てきました。
これは別に間違いというわけじゃなく、天気が悪い時はこれでも寒いくらいなのですが、今日はいささか暑すぎます。
1時間ちょっとの登りで汗だくに…(;・∀・)

 

また、このレイヤリングにはもう一つ重大な問題があり、それが縦走後半にトラブルを起こすことになるのでした。

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ところで今回の山旅、結果的には計画通りに笠ヶ岳まで行けましたが、実はこの時点では"笠ヶ岳まで行こう!"という強い意志はありませんでした。

 

夏休みの北ア縦走に挑み始めてから今年で四年目。
でも、過去の三年間はどれも計画通りには歩けず、最長でも4泊5日で敗退しています。
もう何というか負けぐせがついてしまっていて、今年も内心では槍ヶ岳まで行けたら上出来だね、と考えていたのです。
たぶんその辺りで疲れてきたり風呂に入りたくなるでしょうから、そこで降りてしまおうかな… なんて。


しかし、運命はどう転ぶか分からないものです。

今日は日曜日なので下山する方が大勢いて、すれ違えば当然挨拶はしますし、少し話したりもします。
そんな中、あるパーティの方々からどこまで行くのか聞かれて、一応笠ヶ岳まで… と答えたのが、この山旅のターニングポイントになりました。
(ちなみに「へ~、笠ヶ岳まで… えっ?」という反応が返ってきました。当然ですね、逆方向ですからw)

 

この時点までは"笠ヶ岳まで行く"というのは単に自分の思いつきでしかなく、誰かと約束したわけでもありませんでした。
でもここでどういうルートで行くかをその方々と話して、「いかにも夏休みだね~! 頑張って」と言ってもらった瞬間から、言ってしまったからには実現しなければならない目標になったのです。

 

他の登山者とする何気ない会話。
でもここでのこの会話は、意志薄弱な私にとってはとても貴重な会話だったのかもしれません。

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今日は距離が短いのが分かっていたので、ペースが(自分としては)急ぎ気味になってしまい、結局疲れました(^-^;
登り始めてから1時間8分、13:16に西穂山荘に到着です。

 

天気が良すぎて…

そんな西穂山荘は、日曜の午後だというのに大盛況。

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さすがは人気の山小屋、恐るべしです。

 

さて、こうなると気になるのがテント場の状況。
正直今日は混むわけがないと思っていたので、この光景を見て一瞬肝を冷やしましたが…

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こちらはガラガラでした。ひえぇ、びっくりした…

 

ここ西穂山荘のテント場は小屋の正面、徒歩5秒のところにあります。
数ある北アのテント場の中でも、もっとも小屋に近いテント場です。

 

しかし知っていたとはいえ、やっぱり狭いですね…(;・∀・)
テント場はメインがここで、状況によっては少し先のヘリポートも開放されるのですが、今日張っていいのはここだけ。
これでも一応30張まではいけるそうですが、30も張ったら足の踏み場もなくなりそうです。

 

大混雑の日は張っていい範囲が小屋脇まで拡大するようですけど、そこも埋まったら小屋泊まりになるそうです。
到着はお早めに。

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小屋に一番近い場所にテントを張ったら、今日のミッションは終了です。

 

ちなみに私は西穂高岳はもちろんのこと西穂独標も未踏。
ですので普通ならせめて独標に… というところなんでしょうけど、小屋から動く気はありません。

君、何しに山に来てんの!?

いや、だってほら、今回は頑張らない登山だし… 寝不足だし…(^-^;

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ただ、いざここでまったりしようとすると、困ることがありました。

 

今や日差しは頭上からギラギラと降り注ぎ、日陰のない小屋周りではそれを防ぐすべがないのです。
テントの中なら多少はマシですが、それでも居住するにはかなりつらいレベルの暑さ。
小屋でこんなものを買ってみましたが、言うまでもなく焼け石に水レベルです。
このままここにいたのでは日干しになってしまう…(;・∀・)

 

こりゃ無理だ!
そこで、どうせ日に照らされるならもっと風の吹く快適なところで… と、小屋から少し上まで上がってみることにしました。

 

見たいものを見よう

小屋の裏手から、西穂方面への道を登っていきます。

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出だしは大岩地帯なので登るのは少しだけ大変。
でもそんな岩場を抜けて、振り返ってみれば…

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早くも視界が開けてきます。

 

お~! いいじゃん、いいじゃん!(・∀・)
テント場でただ暑さに耐えているより、こっちの方がよっぽどいいわ。
ということで、もう少し進んでみましょう。

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ここから西穂丸山まではほぼ平坦な道のり。

 

丸山への分岐から、独標への登山道を眺めます。

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天に向かってまっすぐ延びる白い登山道と、青空の下に浮かぶ西穂独標。
まさに夏を象徴する景色と言え、さぞかし爽快な山歩きが楽しめることでしょう。

でも私は行きません。いや行けよ!(笑)

う~ん、なんか西穂独標は今一そそられないのですよね。
西穂高岳まで行けるなら行きたいのですが、独標から先は高所恐怖症の自分には無理なのでした。
今日は頑張らない日。のんびりします。

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ということで西穂丸山へ。

 

ほとんどの方にとっては興味をそそられる場所ではないのでしょう。
標柱を撮るために立ち寄る方がいる程度の、静かなところでした。

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でもそんな丸山からは、素晴らしい景色を見ることができます。

 

前穂から始まり、霞沢岳、乗鞍岳、焼岳、蒲田川を挟んで笠ヶ岳、そして西穂高岳。
ロープウェイ山頂駅展望台からの眺めをも凌駕する、開放感抜群の展望が広がっていました。


今年も北アルプスに来て良かった…

 

座ってこの景色を眺めていると、そんな思いがジワジワと沸き上がります。
そして、初日にして早くも今回のプランニングは正解だったな… とも。

 

例年の縦走は目的地にたどり着かなければならないという時間的制約にとらわれていて、お気に入りの場所を見つけてもそこでのんびりすることができませんでした。
ゆっくり歩いていれば気づけたことも、急いでいるあまり見逃してしまっていたかもしれません。

 

もちろん長距離縦走も達成感があって好きですし、やめるつもりはないです。
でも何年かに一度は、こうした"あえて冒険しない旅"をしていこうと思いました。
ここで心地よい風を浴びながらただ景色を眺めているだけの時間が、自分にとってはとても貴重な時間だと思うから。

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夕方になると、頭上には厚い雲が垂れ込めてきました。
星空は見られそうにないので、早めに寝てしまいましょう。

 

小屋に隣接しているので、小屋の話し声が響いてくることもあるという西穂のテント場。
でも寝不足だったためか声が気になることもなく、あっという間に眠りに落ちていったのでした。