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登山とマラソン、ときどきゲーム

甲斐駒ヶ岳 2日目

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2018年7月15日。

黒戸尾根からテント泊で挑んだ甲斐駒ヶ岳。その2日目の記録です。

1日目の記事はこちら。

k-taro.hatenablog.com

★ 2日目 7/15(日) 【 七丈小屋 → 甲斐駒ヶ岳 → 尾白川渓谷 】

2日目は狙い通り2時ジャストに起床。

お、俺の体内時計の精度も捨てたもんじゃないな!なんて悦に入っていましたが、2時から歩き始めたいのに、まずはトイレのために小屋まで往復しなければなりませんから、2時起床じゃダメなんでした……

小屋往復は20分ほどかかり、結局、出発したのは2:33。山頂までのCTが2時間半ということを考えると、山頂でご来光を見るのはかなり厳しくなってしまいました。あああ、失敗したなぁ(><)

 

夜の鎖場は不安

真っ暗な登山道を1人で登っていきます。 

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山頂でご来光を見ようという物好きは少数派のようで、先行者はいないようです。序盤で後方から来た2名の方に追い抜かれましたが、結局会ったのはその方々だけ。ですので、山頂に着くまでのほとんどの時間は周りに誰もいない状態でした。

 

夜にヘッドライトで登山道を歩くこと自体は慣れてはいますが、それでもこうして初めての道を歩くのはやはり心細いものです。ヘッドライトが照らす範囲は狭いですから、昼間なら一目で見渡せる道も、夜だとどこが道なのかすぐに判断できないこともあって、余計に不安が募ります。

 

それでも、八合目の御来迎場までは単なる体力勝負の道だったのでまだ余裕はありました。しかし問題はここから。山と高原地図に記載がある通り、ここから鎖場の連発が始まります。

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(これは帰りに撮った写真ですが)山頂までに多数ある鎖場は、後になって冷静に考えてみれば、別に怖い鎖場ではありませんでした。そのほとんどがこの写真のようなまっすぐに登るタイプで、トラバースしながら崖に身を乗り出すようなタイプの鎖場はほぼなし。

なので明るくなってから登ってくれば苦労しなかったと思うんですけど、暗い中だと鎖場の全貌が把握できなくて、下はどうなってるんだろうとか、ただ怖かったわけです。

 

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(これも帰りに撮った写真です) しかもこの辺りからぼんやりと山容が見えるような明るさになってきたのですが、行く手に見える山頂は明らかに絶壁にそびえているようにしか見えません。

まさかこの崖を登っていくはずがないので右から巻いていくんでしょうけど、そっちだってお気楽登山道であるとはとても思えませんから、この後も恐怖地帯が続くのか……と思うと、テンションは下がり気味に。

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更に、振り返れば東の空は赤く染まり始めていて、やはり山頂でご来光を迎えるのは無理そうです。

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なので、この斜面を登っているときはもう半泣きでした(^-^;

 

ところが、その斜面を登りきると……

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……えっ……!?

 

目の前に見えたのは山頂の祠。思わず声が出ました。高度計を見ると山頂まではまだ40mほどあって、間に合わないと思っていたのでこれはビックリ。

本当の山頂はこの先ですが、距離にしてはほんの数分で……

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山頂とうちゃーく! やったぜ!!(^o^)

山頂に着いてこんなに嬉しかったのは久しぶりでした、ほんとに。あー、間に合ったよ……!

 

到着時刻は4:33、そして……

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4:36、東の空から太陽が昇りました。

この瞬間をここで迎えられて本当に良かった…… 感無量です。

 

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独立峰に近いだけあってその山頂からの眺めはまさに圧巻。

東方面は木曽駒、御嶽、北アルプス、八ヶ岳が望め……

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西方面に向かっては鳳凰三山、富士山、北岳をはじめとする白根三山、そして仙丈ヶ岳を望むことができます。最高ですね!

この日、時間がたつほどに山頂は大混雑していったそうですが、この時間に山頂にいたのは延べ4名だけ。涼しく静かな頂で、登頂の喜びをゆっくりかみしめることができたのでした。

 

高度慣れしているうちに

さて、満足したら下山にかかりましょう。別方面から来たソロの女性と「涼しいのは今だけで、 下は暑いんだろうね~!」なんて話しながら別れて、後でその意味を十分に味わうことになりますが、まあそれは当分先の話。

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その下山、登りであれだけびびっていた自分としては無事に降りられる自信がなく、山頂から家族にLINEで遺書を送る有様でしたが(笑)、この頃になると高度慣れしていたため、視覚的な恐怖感はまったくのゼロ。

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先ほども書いた通り、明るいところで見れば鎖場も怖くなかったですしね。

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それと、今回は登山靴ではなくトレランシューズで来たのですが、これも正解でした。

最近はランばっかりで登山用の脚ができておらず、前回の富士山を登山靴で登った時に岩場歩きが思うようにできなかったので、今回は軽いこちらの靴で。トレランシューズはソールがふにゃふにゃなので足裏は自分の力で固めないといけなくて疲れますが、自在に曲げられるというのはメリットでもあります。グリップも良くて、岩場歩きの不安はありませんでした。

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空に向かって下りていくようなこの爽快感、最高です(^-^)

この頃になるとテント場や小屋から途切れることなく登山者が登ってきました。ピストン組もいますが、北沢峠方面に縦走するパーティや、鋸岳方面に挑むエキスパートもちらほら。みなさん、連休を満喫しているようで何より。

 

6:46、テント場に帰還。ここまでは全く問題なしでした。ここまではね。

 

怖さと疲労と熱中症と

さて、下山の最大の難所は例の垂直梯子付近なので、高度慣れしているうちにあそこも突破してしまいたいところです。

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しかしテントがそう簡単に撤収できるわけもなく、出発できたのは7:33。この間に高度慣れはリセットされてしまいました。ああああ、やばい……

 

そして、書くまでもないと思いますがやはり垂直梯子エリアは地獄でした。

ただでさえ怖いのに、早くも麓から登ってくる人が多数いて、不安定な姿勢ですれ違い待ちすることも何度も。死ぬ、死んでしまう!と、もう魂が口から半分抜けていました(^-^;

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加えて、この頃になって気づいたのですが、どうにも脚に力が入りません。

思えば金曜から土曜にかけての睡眠時間は1時間、昨日もせいぜい細切れで3時間程度しか寝ていませんから、体力があるはずもないんですよね。特に膝は今にも膝カックンしそうなくらいで、下りなのにスピードが上がりませんでした。

 

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しかし……

そうして怖いことも疲れていることも、最後の問題に比べればまだましだったのかもしれません。刃渡りを抜け、もう後はただ歩いていくだけだから楽勝だ……そう思ったこの最後の行程が、実は最大の難関となって立ちふさがったのでした。

その原因は驚異的な暑さ! とにかく標高が下がるにしたがって登山道が尋常じゃなく暑くなってきたのです。

天気はピーカンで、樹林帯なので風は吹かない……そんな過酷なコンディションの中で歩いていると、ただ降りているだけなのに顔から滝のように汗が流れます。

水は足りているので脱水にはならないと思いますが、体を冷やす手段がないままでは熱中症になるのも時間の問題です。

木陰で休んでいればまだ少しは涼しさを感じるものの、止まっていると今度はアブ・ブヨの大群に襲われるのでおちおち休んでもいられません。(虫よけは塗ってあったのに、腕はもう虫刺されの跡だらけに……)

 

登山口は尾白川渓谷の沢沿いなので、とにかく一刻でも早くあの沢に降りて身体を冷やさないと死ぬ……! その一心で朦朧としながらも歩を進めました。

 

なので12:30に登山口に降り立って、ザックを投げ捨てて沢に入った時は本当に安堵したものです(^-^; あと30分遅かったら本気でやばかったかも。そのくらい、この日は信じがたいレベルの猛暑でした。山頂で「下は暑いんだろうね」なんて言ってた頃は半ば冗談だったんですけど、全く冗談ではありませんでした……

 

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日差しに照らされて真っ白に見える竹宇駒ヶ岳神社を通過し、

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12:52、命からがら駐車場に帰還。そしてその駐車場も標高800m弱とは思えないほどの灼熱地帯でしたからゆっくりもできず、そうそうに車に飛び乗って温泉へ。そうしてようやく人心地つけたのでした。

※ちなみにこの日は中央道が事故渋滞だったので帰る気が失せて甲府に泊まったのですが、その甲府の気温は40℃でした。40℃ってなんだよ……

 


 

いろいろな意味で苦労した今回の甲斐駒ヶ岳登山。

やはりテントを背負っての黒戸尾根は一筋縄ではいきませんでしたね。これまでにも急登と呼ばれるブナ立尾根や合戦尾根、笠新道などを登ってきましたが、私の感覚ではこの黒戸尾根はそれらに比べて明らかに頭一つ抜けていると思いました。今回はテント泊とは言っても42Lザックでの一泊装備でしたから、これが縦走用のザックだったらと思うと、今の体力でも自信はないかも。

それに、高所恐怖症の観点から言っても、今回はこれまでで一二を争うレベルでハードでした。GWの北穂でも死ぬと思っていましたけど、あれに勝るとも劣らないくらい。高所恐怖症持ちの方は、行けそうかどうか冷静に判断されるのが良いかと思います。

 

ただ、それでも黒戸尾根をテント泊装備で登れた、というのはやっぱり自分にとっては大きな自信になりました。念願の山頂にも立てて、これで宿願が一つ果たせたと思うと本当に嬉しいです。いつもいつもこのレベルの登山をし続けたいとは思いませんが、たまにはこうしてチャレンジもしていかないとね!