2018年6月17日。
4度目のウルトラマラソン、62.195kmへの挑戦の舞台はここ、栃木県・日光市。
実はこの大会、楽しみにしていたわけではなかったのです。去年の第1回大会の印象がとても悪くて、今年もダメだったら見限るぞ…… そんな気持ちでの参加。期待もしていませんでした。
ところが、いざふたを開けてみれば…… 参加して良かった、確かにそう思わせてくれる舞台が、そこにはあったのでした。
※私は栃木県民なので地元・栃木の大会の評価は厳しくなりがちです (せっかく遠方から来てくれたランナーを楽しませられなくてどうすんの?と思ってしまうので)。
ですので今回のレポは、特に前回大会の記述においてかなり辛口な部分もあります。後半はそうでもないですし、前書きもとても長いので、本編だけを読みたい方は「霧雨の中のスタート」をクリックして飛んでください。
参加に至った経緯
この大会は2017年に初開催された大会で、栃木では(恐らく)初めての大規模なウルトラマラソンです。ですので去年は一も二もなく参加を決定。
ところが……
これまで私は基本的にRUNNETの大会百選に選ばれるようなド安定な大会ばかりに出てきたせいもあるかもしれませんが、去年のこの大会の運営のひどさはもう目を覆わんばかりでした。
詳しく書くと罵詈雑言の嵐になりますし(ですので去年はレポなし)、今更書いてもしょうがないので省きますが、こんなグダグダな大会もあるんだ……と逆に笑えて来るくらい、ある意味衝撃的ですらありました。
日光市は最近になってマラソン大会を開催しては不評で中止、を繰り返していまして、第1回大会の印象がどれだけ重要なのかわかっているはずなのに、何で学習しないんだろう……? と疑問を抱くような出来。実際、RUNNETの評価も酷評が目立っていたものです。
そして迎えた第2回大会。
参加者は去年より減るでしょうし(なぜか運営は減るのを予想していない節がありますが、初めての大会だから記念に出よう、という層がごっそり減る+不評だから新規参加者が増えない=減るのは当たり前ですよ。むしろなぜ維持できると思うのかの方が不思議です)、運営が改善されなければまた不評でしょうから赤字が増えて、ハイウェイマラソンのように市議会で追及されたあげく中止に追い込まれることになるだろうな、と思っていました。
個人的には改善には全く期待しておらず、きついだけで面白くもないなら参加したくないのです。しかし、仮にこれで最後の開催になったとした時に、参加もせずに外野から文句を言うのはそれはそれでカッコ悪いなと思いました。なので、せめて最後を見届けてみよう…… そんな気持ちでエントリーしたのでした。
ん、ちょっと雰囲気違うかも?
今年も土曜日13時からの前日受付に参加。当日受付もありますが、出走前は心の余裕を持ちたいので、先にゼッケンを受け取っておきましょう。
今年の会場は日光霧降アイスアリーナ(日光霧降スケートセンター)。
去年の今市運動公園体育センターからこちらに移りました。去年の会場駐車場は雨のせいもあって水田のような有様で、車も靴も泥だらけでしたから、駐車場がアスファルトになっただけで謎の感動が(笑)
この時間は人も少なくて、スムーズに受付を終了。
なかなか綺麗な施設ですね。去年は狭い&雨で大混雑でしたが、こちらはキャパも大きくて、混んでいるという印象は感じませんでした。
それに…… 何となくですが、今年は流れがスムーズな印象があります。
やっていることは去年と同じなんですけど、去年は全体的にかみ合っていないというか、チグハグな感じだったんですよ。それが今年は整理されているというか。「ん、今年はちょっと違うかも?」なんて思いながら、一旦家に戻りました。
霧雨の中のスタート
当日は大谷川の指定駐車場に車を停めて、シャトルバスで5時20分過ぎに会場入り。
前回の安曇野同様、会場には給水所あり。ありがたいことです。
昨日の印象通り、人が大勢いても混んでいるわけではなく、トイレも荷物預けもスムーズでした。こうしてレース前にストレスを溜めなくてすむのは助かりますね。
この日の天気予報は晴れ・降水確率30%だったんですけど、前日から降っていた雨は止むことなく、霧雨の降る中、スタート地点に向かいます。まあ去年みたいに暑くない分、この方が走りやすいかもしれませんね。
6時、拍手と共に62.195kmの旅が始まりました。
まずは鬼怒川を目指して
スタート会場からは一旦下って霧降大橋を渡り、日光のメインストリートへ。
そこから東照宮を右に折れて、再び霧降大橋の横を通過すると、東武バス日光営業所のエイド(5.8km)に到着します。
序盤は道が狭くて渋滞していたため、5.8km走るのに45分もかかってしまいました。
私が出ているウルトラマラソンは制限時間がゆるいものを選んでいて、例えばこの日光も62.195kmの部の制限時間は9時間半もあります。とはいえ、歩いていたら間に合わないわけですから、前半でどこまで貯金を作れるかが勝負。ちょっと急ぎましょう。
今市に向かって、県道247号線を東へ。
ここがレポでよく言われている「歩道が狭い」区間になります。写真のところはたまたま広いですが、この先の歩道は並走不可。 追い抜きは困難ですから、密集したままここに突入しないようにご注意を。
今市で国道121号線(会津西街道)に合流したら、今度は北へ向かいます。
くどいですが、天気予報は晴れです。しかし全く晴れる気配はなく、むしろ雨脚が強くなってくる始末。
でも、気温が低いのは救いなのかも。去年は晴れていても湿度が異常に高くて、おかげでシャツはびしょびしょのまま。気化熱が奪われないからオーバーヒート気味で、途中リタイアに追い込まれたものでした。
それに比べれば遥かに走りやすいのは確かです。爽快感はないですけどね(^-^;
19km地点手前で121号線を離れ、日光江戸村に向かう脇道へ。
去年はここでもう27kmを越えていて、ただ苦痛に耐えながら歩いていたものです。今年はスタート地点が違うこともあってまだまだ元気。
やがて日光江戸村の敷地に入りました。
お、ここは改善ポイントですね! 今年は敷地に入ってからしばらく園内を通り、エイドを経由して先の出口から抜けるようになっていました。そのためそれなりに園内の雰囲気も味わえて、いい感じに(^-^)
去年は敷地に入ったと思ったら50mくらいで折り返してまた同じところから出たので、一体今のは何だったんだ(笑)と思うくらい滞在時間が短かくて、それも不評の一因だったように思います。こうして改善が見られると嬉しくなりますね。
江戸村を出たら一度鬼怒川を渡り……
小佐越駅→東武ワールドスクウェア駅前を通って、24.8km地点の鬼怒楯岩大吊橋のエイドに到着。(9:05)
62.195kmの部ではここが第一関門になります。閉鎖時刻は10時ですから残り55分。さすがにまだ余裕ですね。
こんなことを書くとガチ勢には呆れられそうですが、私はこの時点では完走できるとは思っていませんでした。ですので例によってどこでリタイアするか考えながら走っているんですけど、まだまだ序盤なので、いくらなんでもここでやめようという気にはなりません。先に進みましょう。
ああ、そうそう、肝心なことを書き忘れていました。
何度か書いている通り前回大会は評判が良くなかったのですが、その中でも大きな要素を占めていたと思われるのが、エイドの内容が貧弱だったこと。
ボランティアさんたちの頑張りは十分感じられましたから、貧弱だった、という言い方が失礼ならば、少なくともウルトラマラソン向きではなかった、と言うべきでしょうか。
初めての大会だから、日光らしいものを……と考えられたのだと思います。それはいいのです、正しいのですが、そうは言っても長い人たちは100km走るわけですから、まず一にも二にも炭水化物が必要なのです。それがうまく伝わっていなかったのではないでしょうか。エイドにパン・お米系の食べ物はほとんどなく、お腹にたまらないものばかりが充実していた印象でした。
それが今年は大改善されていまして、これは本当に感動ものというか、ああ、真剣に取り組んでいこうとしてくれているんだな、と思って嬉しくなりましたね。ほとんど全てのエイドにパンなどが用意されていましたし、飲み物も水、"普通の"スポドリ、そしてコーラ(これがありがたかった!)と充実。
去年の経験から、途中でコンビニに寄ることも計算に入れてお金も用意してきたのですが、ほとんどの方はエイドの給食だけで問題なく走れたのではないかと思います。
ここの塩キュウリ、美味しかったですよ。疲れた身体にあの塩分は助かりました。用意してくれた方、ありがとうございました。
鬼怒川の温泉街をぐるぐる回って、27.4km付近で鬼怒川温泉ふれあい橋を渡ります。
正面に見えるのは文字通り「鬼の階段」。去年は多くのランナーが苦しめられた地獄の上りでした。ただ今年は62km組はまだ前半ですから、去年のように苦労しているランナーはあまり見なかったように思います。自分もまだ走っていて
加「おはよう、北条加蓮だよ!
— K-TARO (@ktaro_77) June 17, 2018
今日はウルトラマラソンで日光を走ってるよ。ここは27km地点で、鬼怒川の橋の上だよ。
あと残り35kmだけど… あっ、Pさん倒れてる」
P 「俺の事は気にするな…置いていくんだ…」
加「はいはい。いいから立って、走って!」 pic.twitter.com/CZYsLDNQlI
こんなネタツイートをするくらいの余裕はあったのでした。
どうする⁉ 45km関門
ここでコースは反転し、今度は南に向かって走っていくことになります。
鬼怒川温泉駅そばの陸橋、懐かしいですね。去年はここはもう完全に心が折れていて、次の関門でリタイアするんだ、早く着いてくれ……!と思いながらトボトボ歩いていたものです。今年はまだ元気。
この辺りから、徐々に信号に引っかかる場面が出てきます。交通整理は最小限にしかしていない大会ですから、信号待ちはやむを得ないでしょう。信号は遠くから見えるわけですから、うまくペースを合わせて進みました。
121号線を南下。
この写真だとよく分かりませんが、向かい側にあるセブンイレブンの脇から江戸村への道が延びていて、100kmのランナーさんたちが続々と江戸村に向かって走っていくのが見えます。彼らはすでに56kmほど走っているはずですが、歩いている人はおらず、みんな快調に飛ばしていました。今市→鬼怒川は登りなのに、それを感じさせない走り。何なんだ、あの人たちは……!
なお、写真でもわかる通り、この大会は沿道に応援の人が鈴なり、というような大会ではありません。まだ2回目ですし、知名度も低いのでしょう。
ただ、それでも去年よりは確実に応援してくれる方が多かったように思います。去年は本当に一部の有志の方だけが熱心に応援してくれた印象でしたが、今年は民家や沿道からずいぶん応援してもらいました。雨なのにありがたいことですm(__)m 通りすがりの車から応援されることも多かったですね。
37km過ぎで121号線を離れて県道279号線→国道461号線へ。
鬼怒川からここまでは下り基調でしたので、私としては初めて37kmまで走れていましたが、ここから登りに転じることになり、歩く場面が目立ってきました。
最近ずっと体調が悪くて、体力が全回復しないので(ゲーム的に表現するならば、最大HPが100あるはずなのに、寝て起きた時に30までしか回復していないような感覚)、今日はそろそろ潮時かな…… というのが、この時の正直な感想でした。
37kmまで走れたのは初めてだから記録更新ですし、次の関門は45.2kmですからこれも自身最長走行距離なわけで、この体調でここまでできれば悔いはないだろうと。
そんなことを考えながら、関門目指してほぼ歩きで進んでいったのでした。
そうしてたどり着いた今市運動公園、45.2kmの第二関門。閉鎖時刻は13:10、そして現在時刻は12:12。
う~ん、微妙だ……!
いや、もうリタイアする気まんまんだったんですよ。次の関門は54.8kmですから、これはもう遥か先に感じますし、走る余裕もなくなっていますからもう無理だろうと。
ところがですね、さすがに周りはウルトラランナー(を目指す方々)。どこを見渡しても、こんな時間からリタイアのバスを待っているランナーなんていないわけです。
これが例えば閉鎖10分前だったりしたら、間違いなく私のレースはここで終わりだったことでしょう。しかし、この状況で1時間近く待つ勇気は私にはありません(^-^;
仕方ない、行くしかないか……
景気づけに自販機で缶コーヒーを購入し、飲み干してから再び歩き出します。普段なら甘いはずのコーヒーはとても苦く、完全に糖質を消費しきっていることを改めて自覚させてくれたのでした。
間に合うのか? 何キロで歩けばいい⁉
この頃になると、62km組はさすがに歩く人が目立ってきました。そんな私たちの横を、100km組のランナーさんが一人、また一人と軽快に走り抜けていきます。自分が参加しているからこそ分かるその凄さ、その根性。さすがとしか言いようがありません。
47km付近で、日光杉並木の旧道へ。
この辺りからコースはもう完全に上りになります。自分としてはもう脚は売り切れで、精神力だけで進んでいました。景色はいいのですが、それでも補えないこの辛さ。応援にも手を挙げて応えるくらいが限界でした。
道の駅・日光の前を朦朧としながら通過し……
やがてコースは日光だいや川公園に入っていきます。
ここは少しだけですが最後の下り区間があり、久々にちょっとだけ走ってみたり。(まだ走れた自分にびっくりです。よく走れたな)
ちなみにこの中に54.8kmの第三関門があったのですが、関門が見えてからコースは右に行ったり左に行ったりでちっとも関門に近づかず。並走していたおっちゃんと「ずいぶん迂回させるな!」なんて文句を言いあうくらいでした(笑)
さて、その関門は13:45頃に通過。(閉鎖時刻は14:35ですから50分前)
先ほどの45.2km関門は、ゴールまでまだ17kmもありました。私はマゾではないので17kmも歩くなんてまっぴらごめんですから、あの場ではリタイアしたかったわけです。
ところがこの関門では残り7.7km。さすがにこれでリタイアするのはちょっと空しいですね。ここまで来たら最後まで行くしかないでしょう。
そこで改めて計算してみると、ゴールの制限時間は15:30なので、残り105分で7.7km、つまり時速4.4km以上で進まなければならない、ということが分かります。
時速4.4km?余裕じゃない、と思いますよね? のんびりウォーキングじゃなく、一応頑張って早く歩いているわけですから。
ところがですね、ここまで疲れていると4.4km/hは決して楽ではないのです。
通常であれば、私でも6.0km/h以上で歩けると思います。しかし、例えばフルマラソンの終盤で歩いている場合は、どんなに頑張っても5.5km/hがせいぜい。しかもこれは休憩なしでのペースですから、もしトイレに寄ったり信号待ちで止まったりすればもっと落ちるわけで、そう考えるとこの時間でも全く余裕はありません。
公園を抜けると霧降大橋手前まで長い長い上りが待ち構えていました。
さすがに周りのランナー(ほとんどウォーカーになっていましたが)も疲労は隠せないようで「もういやだ~!」なんて悲鳴も聞こえてくる中(笑)、チラチラと時計を見つつ、間に合うよな、大丈夫だよな……⁉と思いながら早歩きで進みます。
気温も上がってきましたから、今頃になって汗だくに。道中でコンビニに寄ってアイスを買ったり、自販機でココアを買ったりしてクールダウンしながらなんとか59.8kmの最終エイドへ。
これで残りは2.5km。「いけるいける!」「ナイスラン!」「今のペースならゴール間に合うよ!」なんて声援を受けて、よし、あと一息だ!と思ったのもつかの間
ここにきて、1km近くにわたる地獄のような上り坂が(><)
そうだった…… 行きは渋滞で歩いていたから気になりませんでしたけど、この上りはとんでもないんでした。ここは車で霧降から下りてくるときにスピードが出すぎて怖いくらいの坂ですから、今の体力でここを上るのはもう苦行どころではなく、半ば無の境地に達したくらい、思考もできない有様でした。
でもここが最後の難関。左に折れて坂を下るとゴールしたランナーの名を読み上げる声が聞こえてきて、テンションも復活。応援に励まされながら会場にたどり着き、最後の50mだけは何とか走って、そして……
15:15過ぎに何とかゴール!!
これはもう本当に、心から嬉しかったですね。まさかゴールできるとは思っていなかったので。自然にガッツポーズが出たのも久々です。タイムは自慢できるものじゃなく、ほとんど制限時間ギリギリなので、いつもならちょっとカッコ悪いななんて思ったりもするのですが、今回に限ってはとにかく嬉しさしかありませんでした。
この後は毎年恒例のいちごスムージーを、これまた毎年恒例でおかわりしつつ(お気に入りなのです)、62kmの制限時間が来るまでランナーを見届けてから、着替えてシャトルバスで駐車場に帰りました。
大会を振り返って
冒頭でも書いた通り、私はこの大会に全く何も期待していませんでした。どうせまた去年の繰り返しなんだろうし、ダメすぎてレポを書く気もしないか、もしくは書いても文句だらけになるんだろうな……と。
でもね、今年は本当にいい意味で予想を裏切られました。
去年ダメだったところはほとんど全て改善されたと言っていいんじゃないでしょうか。運営のグダグダ感はすっかり解消され、エイドもまるで別物。コースも小改善ながら去年より魅力が増していました。
本来ならゴールできる体力があるとは思えない自分がゴールできたのは、こうしてなにかにつけ「いい面」が垣間見えることで、精神的に前向きになれたからではないかと思っています。もしつまらない大会だなと思っていたら、間違いなく途中の関門でやめていたことでしょう。でもこうして運営側の気概を感じると、こちらも頑張らなくては!という気になるものです。
駐車場に戻って、この独特の完走メダルを眺めていると、改めて自分もウルトラランナーになれたんだ……という嬉しさがこみ上げてきました。
繰り返しになりますが、走りきれたのは関係者の頑張りのおかげ。噂では(今年の参加人数が見込みより少なかったので)来年の開催ははてなマークがついているようですから、願わくばこれを去年からやってくれていれば……という歯がゆさもありますが、過去のことはもう仕方がありません。今はただ、関係者の奮起に感謝するのみです。
今年は素晴らしかったですよ! いい大会をありがとう!!
(2018/12/27追記)
2019年の3rd大会は中止との発表がありました。う~ん残念……
楽しい大会でしたから、いつか復活することを期待しています。